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ジェグテック登録企業と東北大学の連携について
(前編)

TOHOKU UNIVERSITY × J-GoodTech

ジェグテックでは、中小企業と大学などの教育・研究機関とが、
オンライン上でさまざまな目的の情報交換を進めることができます。
なかでも東北大学は、国立大学としてはじめてジェグテックを活用し、
中小企業との連携に力を注いできました。すでに形となっている連携の実例とともに、
東北大学の産学連携活動を前編・後編の2回に分けてご紹介します。

産学連携で日本の産業界に大きく貢献している東北大学。

東北大学は、1907年(明治40年)の建学以来、一世紀以上の歴史を有する総合大学として、「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の理念を掲げて、優れた人材を輩出し、数々の研究成果を世に送り出してきました。KS鋼、NKS鋼、八木宇田アンテナ、光ファイバー、垂直磁気記録など、東北大学から生まれた発明も多岐にわたります。そうした大学の研究成果を企業のイノベーション創出につなげるため、企業との実用化・事業化を見据えた共同研究を推進。企業との人的連携プラットフォームを構築する共同研究講座・部門を大学内に設置するなど、企業と連携した実用化・事業化を目指しています。

大学の技術支援を受け、一企業では困難だった試作開発を実現。

事例1 | 東北大学と株式会社倉元製作所との連携

1.倉元製作所の事業概要

倉元製作所では、液晶用硝子基板の精密加工、販売を主な事業としています。1992年頃からMEMS*1技術を応用した薄膜デバイスを手掛けており、現在、マイクロヒータ*2を応用した流量センサ*3などのデバイスの開発、製造、販売を行っています。新規デバイス開発の際などに生じる課題を解決するため、大学の知見や試作開発設備を積極的に活用しています。

*1. MEMS:機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に、微細加工技術によって集積化したデバイスのこと。MEMSを利用した代表的なものとして、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープなどが挙げられる。
*2. マイクロヒータ:シリコン基板上に金属薄膜を成膜し、5μm程度の幅でパターニングすることで得られるヒータ。熱絶縁をよくするため、マイクロヒータ下部のシリコンは除去している。
*3. 流量センサ:配管などの中を流れる気体や液体の流量を計測するセンサのこと。羽根車式、ダイヤフラム式、電磁式、熱式などいろいろな方式の流量計が市販されている。

2.東北大学との連携経緯

倉元製作所と東北大MEMSグループとは、技術相談などを通して従来から関係がありました。近年、倉元製作所では、4インチウェハへの試作開発依頼が増えており、社内で対応困難な試作開発の一部を東北大学が運営する「試作コインランドリ」で行うこととなったのです。

3.具体的な連携内容

試作コインランドリのクリーンルーム(1,800㎡)に設置された、微細加工に関する100台以上の共用設備のうち、試作開発案件ごとに必要な装置を時間単位で選択して利用しています。約50年にわたり大学が蓄積してきたノウハウをベースとする技術支援を受け、所望の加工、評価を行っています。具体的には、対象材料、加工寸法に対する最適な加工装置や、その微細加工条件の提案を受けています。加工結果については大学側と共有し、問題があった場合は一緒に検討を行い、問題の解決を図ります。得られた加工成果の応用展開についても考えます。

4.利用企業のコメント

株式会社倉元製作所 センサ製造課 岩渕修 氏
当社では、液晶用硝子基板の切断、面取り、研磨、透明電極膜の成膜等の開発・製造・販売を主な事業としており、それらの技術及び、MEMS技術を利用した極小のマイクロヒータ等、薄膜デバイス、センサの開発、製造、販売を行っています。東北大学では、先駆け的なMEMSの研究が行われており、試作コインランドリからは、様々な知見、細かな技術指導を受け、また関連装置も使用させていただき、当社開発業務を加速することが可能となっています。中小企業が試作コインランドリを活用することは、様々な技術相談を受けられることで相乗効果を生み、更なる技術革新が可能になるものと捉えています。

5.研究室のご紹介

MEMSを中心とした各種微小デバイス試作開発のための設備を企業に開放し、実用化を支援。センサなどのMEMSだけではなく、半導体や光部品の試作にも利用できます。また、デバイスのみならず、薄膜成膜やエッチングなどの単工程での利用も可能で、試作から製品化まで一貫して行える環境のもと8名の研究スタッフが最大限支援し、これまでに約200社の企業が利用しています。

試作コインランドリについて詳しくはこちら

事例2 | 東北大学と東杜シーテック株式会社との連携

1.東杜シーテックの事業概要

東杜シーテックは、自動車や電子機器などに欠かせない組込み制御システムの開発などを手がける企業。これまで培った組込みシステム技術と東北大学の最先端画像処理技術の融合を果たした実績があります。

主な製品等

開発品(特許出願済み):真鱈などの雌雄判定(白子と魚卵の有無)結果を、ベテラン並みの確度で誰でも簡単瞬時にアウトプット可能なシステムを安価に提供する。生産性及び付加価値向上、高齢化と担い手不足に対応する1つのソリューション。

主な仕様

  • 雌雄の判定を必要とする魚種の白子と魚卵の有無判定。
  • 生殖腺付近の被検体側で接触計測し、結果を音声及びランプインジケーターでアウトプット。
2.東北大学との連携経緯

東北大学IIS研究センターでは、東日本大震災以降、仙台市内のIT関連ビジネスを行う企業を中心に、多数の企業や、仙台市、宮城県などの行政機関と協力し、被災地域の要望に応えることを優先に復興に資する活動を展開中です(呼称:ITペアリング復興事業)。被災地域のニーズは多岐にわたりますが「高齢化・人手不足と技の伝承」は共通のテーマであり、IT技術など先進技術を利活用することで課題解決に取り組んでいます。
真鱈の雌雄判定技術もその一例。性別により取引価格が異なる魚の性別判定は重要です。一般には経験豊富なベテランを配置し対応するケースが大半であり、真鱈はその典型ですが、漁期は厳冬期で過酷であり、高齢化と担い手不足が慢性化する地域にあって震災はそれを加速させ、将来に渡り人材の確保が難しい状況が続くものと予想されています。このような状況を受け、水揚げ現場などから「ベテランと同等以上の判定精度で、現場で、誰でも、簡単に使える装置は出来ないものか」という相談が東北大学IIS研究センターにありました。センター及び学内外関係者との協議から、実現に向け活動を実施することとし、センシングをどうすべきかの調査から開始。他の方法も含めた基礎調査の結果、実現の可能性が高い超音波エコー画像の応用に絞り検討を進めることにしました。 

3. 具体的な連携内容

(1)開発体制:超音波エコー画像技術については医工学研究科 西條芳文教授と、画像処理技術と機械学習は情報科学研究科 青木孝文教授の研究成果を応用することとし、製品化は画像処理技術を保有する東杜シーテックを中心とした企業グループ、実証試験は気仙沼漁業協同組合(市場)及び唐桑小型船舶組合(タラ漁船)、アドバイザーとして仙台市、宮城県関連部門が担当するという役割で2014年よりスタートしました。

(2)技術内容:具体的には以下の内容、順番で調査を実施しています。1.超音波エコー画像:画像の鮮明化など超音波デバイスの最適化。2.画像処理と機械学習による判定:エコー画像の画像処理と機械学習による判定精度向上。3.実証試験:機械学習精度の向上、実用化の課題抽出及び製品設計へのフィードバック。4.製品化。

4. 利用企業のコメント

東杜シーテック株式会社 代表取締役 本田 光正 氏
東北大学IIS研究センターには、川下企業のニーズに留まらず、各研究室のシーズや地域企業の特徴を考慮した、多岐にわたる協業の枠組み構築までも支援していただいており、大変感謝しています。また、青木孝文教授が会長を務められるマシンインテリジェンス研究会(MITOOS)の運営支援もさることながら、企業連携・協業に比重を置いた活動も並行して推進していただいています。IIS研究センターおよび研究会の活動を通し、地域全体からユニークな製品が続々と創出されております。

5.研究室のご紹介

IIS研究センターは仙台市等の支援のもと2010年に設立された、85研究室からなる東北大学情報知能システム系の産学連携組織です。企業との連携により情報知能システム系の技術資源の実用化を促進し、共同研究を通じ高度な技術を持つ人材の育成から社会貢献を目指すこと、及びより多くの地域企業の参画を促進し地域貢献に資することなどが主な活動目的です。企業出身スタッフの配置、産業界・学術機関・官公庁との人脈を生かしながら、企業ニーズの具体化を支援します。状況により異分野融合(医工、農工など)、競争的資金の獲得、開発・事業化コーディネート対応も視野に機動的な活動に心掛けています。

IIS研究センターについて詳しくはこちら

ジェグテック登録企業と東北大学の連携について(後編)を見る

今回ご紹介した企業

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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