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紫外線や赤外線を吸収するガラスコーティングで大幅な省エネを実現

株式会社フミン 代表取締役 八木澤 勝夫 氏

電力の高騰対策に太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を考える企業は多いですが、
少ない費用で導入できるのが省エネルギーの技術です。

福島県で環境対策資材を製造販売する株式会社フミンは紫外線と赤外線をカットするコーティング剤を、
ガラス面に透明な状態で塗装する技術を持っています。
夏は熱の室内侵入を防ぎ、冬は結露を防止するなど、
省エネルギー効果の大きい技術を開発した背景を八木澤勝夫社長に聞きました。

夏の室温上昇や冬の結露を防止
カーボンニュートラル等に貢献する製品・サービスの特長

フミンが開発した「フミンコーティング」は、紫外線や赤外線を吸収、またはカットする伝導性金属酸化物を、ガラス面にむらなく透明に塗装する特許技術です。

窓ガラスなどを塗装することで紫外線は約90%カットされ、日焼け防止や室内の変色を防ぐことができます。その一方で、可視光線の透過率は約80%程度を確保しているため、室内の明るさには影響を与えません。

また、太陽熱である赤外線は約70%カットできます。夏は暑さのもとになる赤外線をカットすることで室内温度の上昇を抑えます。寒い冬の場合は、暖房を使っていても外気に冷やされることでガラスの内側が冷たくなる冷放射が起きますが、「フミンコーティング」を施したガラスは室内の熱を吸収することで冷放射を解消するので、結露が起きなくなります。大幅な省エネルギーと冷暖房コストの削減に貢献する技術を、八木澤社長は次のように説明します。

「夏に日傘をさすと、外気温が高くても日傘の下にいれば涼しいですよね。フミンコーティングはわかりやすく表現すると、窓ガラスを透明な日傘にする技術です。冷暖房をもっと使うために発電するのではなく、発電しなくても過ごせる環境をつくりたいと考えました」

八木澤社長はもともと海洋物質のフミンを活用した土地改良材を開発し、農業用資材として販売していました。ある日、結露をなくす方法がないか考えていたところ、スマートフォンのガラス面の内側などに使われているコーティング剤を応用することを思いついたといいます。

「赤外線は湿度によってふるえが生じて熱に変わります。スマートフォンなどのタッチパネルが指で触るか、または指を近づけることで反応するのは、湿度に反応しているからです。逆に言えば、コーティングすることによって、赤外線の熱が中に入らなくなります。この技術を応用できれば、結露は起きなくなるのではないかと考えました」

スプレーガンによる塗装方式を実用化
機能/特長/強み

仮説を立てた八木澤社長が、コーティングに使われているナノサイズの伝導性金属酸化物を窓ガラスに塗装すると、確かに結露は起きませんでした。

ただ、課題は塗装の方法でした。スポンジやローラーを使った塗装ではむらができるほか、霧吹きのようなスプレーでは下に垂れてしまいます。フィルムにしてガラスに貼る方法では熱でフィルムが縮んでしまい、なかなかうまくいきませんでした。また、伝導性金属酸化物の限界温度は約160度のため、熱処理をしてガラスに付けることもできません。スマートフォンよりも大きなサイズのガラス面に塗装するのは、大手メーカーでも難しいと考えられていました。

そこで、試行錯誤を繰り返した結果、開発したのがスプレーガンによる塗装方式です。雨粒のような大きさで吹き付けて、重力で垂れる前に乾かす技術で、ガラス面を均等にコーティングすることを可能にしました。さらに、大きな強みになったのは、耐久性が強く半永久的にもつことと施工が簡単なこと、それに費用が安価なことです。スプレーガンで吹き付けるだけなので、障害のある人でも施工することができます。

コーティング材にかかる費用は1平米あたり1万4001円。八木澤社長は「環境マネジメントシステムに関する国際規格のISO14001の数字から決めました。それでも利益は出ます」と話しています。

この技術は国内のみならず世界でも認められています。特許はシンガポールをはじめ、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、中国、台湾、アメリカ、インド、ヨーロッパなど多くの国と地域で取得しました。2011年に東日本大震災と福島第一原発事故が起きたことで、一時は風評被害により3年間輸出ができなくなったほか、国内の代理店も124社から5社に激減しましたが、ここにきて省エネルギーの必要性が見直され、引き合いも増えています。

国立新美術館の電気使用量を大幅削減
具体的な使用シーン、ターゲット、使用例、活用実績

フミンコーティングは住宅だけでなく、大型施設のガラス面にも施工が可能なことから、ホテルや工場、学校など、さまざまな施設に使われています。

国内で活用された大型施設のひとつが、東京都港区にある国立新美術館です。フミンと業務提携する代理店によって施工されました。黒川紀章氏が設計した建物は、ウェーブのある3次元曲面ガラスカーテンウォールを使った特徴的なデザインで、ガラス面は約4700平米もの広さがあります。

このガラス面にフミンコーティングを施工するのにかかった期間は、わずか2週間です。八木澤社長によると、施工前に比べると電気の使用量は年間で約220万kW減ったといいます。

「年間220万kWの電力を太陽光で発電しようとすると、サッカー場10面以上のパネルが必要です。それだけの太陽光発電をする場合、パネルを作るのにも二酸化炭素を排出しますし、莫大な費用がかかります。フミンコーティングは費用も安価で、電気代は20%前後の削減が可能です。国立新美術館の場合は削減された数年分の電気代で、施工費用がまかなえて、現在は浮いた費用でガス発電を導入して電気は購入していません。省エネルギーの経済効果は大きいのです」

また、公共施設の中には、フミンコーティングを活用することで空調を置いていない施設もあります。それは総ガラス張りの建物が特徴的な、青森県八戸市の八戸まちなか広場マニチワです。ガラス面をすべてコーティングしていることで、空調がなくても夏は涼しく、冬は暖かい環境が実現しました。

海外でも大手ホテルチェーンなどで採用されているほか、石油を産出している中東の国々からも引き合いが多く、「夢の省エネ技術」として世界から注目が高まっています。

省エネルギー技術はもっと必要とされる
カーボンニュートラルの取り組み又は企業の特長

フミンコーティングの技術は、フミンの社内でも活用されています。窓ガラスをコーティングすることで、空調にかかる電気代を通常よりも抑えました。また、屋根の一部をガラスにするトップライトを採用することで、蛍光灯もあまり使わなくて済んでいます。八木澤社長は自社の技術が今後もっと必要とされるようになると確信しています。

「東日本大震災のあと、再生可能エネルギーを増やすために補助金なども用意されて、太陽光発電や風力発電が増えていきました。しかし、山間部での太陽光パネルを設置することで、大雨による土砂崩れや洪水が起こりやすくなるなど弊害も出ています。一方で省エネルギー技術は、発電所の建設のように誰かが儲かるものではないからなのか、日本ではなかなか広がりませんでした。それでもフミンコーティングはこれまでに6万5000平米以上を施工してきました。特許を得ているので補助金などの対象になりませんが、費用対効果が認められていると感じています。カーボンニュートラルを達成するためにも、改めて省エネルギーが見直されるのではないでしょうか」

フミンは研究開発に特化しており、中小機構のJ-GoodTech(ビジネスマッチングサイト)を活用するなどして、全国の代理店と業務提携することで自社の技術を広げる方針です。八木澤社長はフミンコーティングの提供と技術的な指導も行う考えです。

「コロナで打撃を受けた中小企業も多いと思います。フミンコーティングを新規事業として取り組みたい企業があれば、当社と代理店契約を結ぶとともに、事業や業種の転換を支援する国の事業再構築補助金などを活用することも可能です。当社もできる限り支援いたします。原子力発電所の新設も議論されていますが、電気が足りないのであれば節約するか、もしくは省エネルギーに取り組む考え方が、いつかは主流になると思っています」

ABOUT COMPANY

株式会社フミン
福島県福島市郷野目字上21
受賞実績:2021年度省エネ大賞 中小企業庁長官賞
資本金:1,000万円
従業員数:4名

代表取締役 八木澤 勝夫 氏
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