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日本一やり甲斐ある会社を目指す
天彦産業のビジネス手法とは(後編)

株式会社天彦産業 代表取締役社長 樋口友夫 氏

ABOUT COMPANY

「日本で一番やり甲斐のある会社を目指す」。その企業理念通りの社風が注目を浴び、
書籍や雑誌、TVなどさまざまなメディアで取り上げられることも多い株式会社天彦産業
社員第一主義が息づく働き方は、業績UPにもつながり、
「Webを活用した販路拡大」や「海外展開」など、近年多くの結果を残していると言います。
そうした話題を中心に、代表取締役社長 樋口友夫氏に伺ったお話を、前編・後編にわたりお送りします。

すべての出会いを大切にしたことで得たビジネスの活路。

社員第一主義の根底にあるのは、樋口氏の「人とのつながりを大切にしたい」という想いに他なりませんが、それは社員や顧客の方々だけに対するものではなく、あらゆるつながりに向けられているのだと言います。同氏は、こんな象徴的なエピソードをお話しくださいました。「2006年頃、私が家族を連れ立ってソウルに旅行した時のことです。同じツアーに男女のペアが参加していたのですが、彼らは日本語も韓国語も中国語も流暢に話していて、どこの国の方だろうと少し気になっていました。するとたまたま帰りの飛行機で隣同士になり、思い切って話しかけてみたところ、男性の方は神戸にある大学の大学院に留学中の中国人学生ということが分かり、今回の旅行は韓国にある親族の墓参りを兼ねた新婚旅行だったことも教えてくれました。その親しみやすい人柄と同じ関西圏という縁に惹かれ、後日大阪で食事をする約束を取り交わしたのですが、この時の出会いがその後当社の海外展開を大きく発展させることになるとは、さすがに夢にも思いませんでしたね」。

代表取締役社長 樋口友夫氏
代表取締役社長 樋口友夫氏

社員の転機を、
会社の転機につなげていく。

「約束通り大阪で再会した中国人学生は、奥様が一足先に上海で暮らし始めていたにも関わらず、自分は故郷へ帰らずにこのまま日本で職を探していくつもりだと明かしてくれました。それならば、一度うちの会社を覗きに来ないかと、そう誘ってみたわけです。すると、早速翌日彼から電話があり、ぜひ就職させてくれないかと言われたもので逆に驚かされましたね」。その後社員として同社に招き入れられた彼は、非常に人情に厚く、何より優秀だったそう。「2年半ほど経った頃でしょうか、奥様の親御さんから上海に戻ってくるようにと要請を受けた彼が、苦渋の決断の末、辞めさせてほしいと私に願い出たのです」。その申し出を快諾した樋口氏は、同時に「もう1年間だけ現地とのパイプ役として手を貸してほしい」と依頼したと言います。その思いに応え、彼が縁を取り持った中国人の方々が、彼同様に心ある方ばかりだったことに樋口氏は感銘を受け、ある大きな決断をします。「彼に、中国で会社を作ってみないかと、そう持ちかけたのです」。

天彦産業が初めて海外進出を果たしたのは2005年のこと
天彦産業が初めて海外進出を果たしたのは2005年のこと

社員が活躍できる舞台としての海外展開。

当時まだ20代の若さで、樋口氏から新会社の責任者に抜擢された中国人社員。彼のその手腕は、立ち上げの準備段階から大いに発揮されたのだそう。「通常中国で会社を起こすとなると1年以上はかかると言われています。ところが彼は、現地のコネクションを最大限に活かして準備を早々に整えると、たった3ヶ月で業務をスタートさせるに至ったのです」。上海のビルの一角を借りて事務所を設け、新たに女性を採用し2人で始まった新会社は「上海天彦祥商貿有限公司」と名付けられ、今や同社のタイ拠点である「TENHIKO INDUSTRIAL(THAILAND) CO.,LTD」のサプライヤーとして、中国での鋳物の調達をはじめとするさまざまな業務を執り行っているとのこと。「私の海外展開の考え方として、初めに進出先を決めるのではなく、あくまで人ありき。有望な人材の能力を活かせる国にしか、当社は進出するつもりはありません。だからこそ成功できているのだと思いますよ」。同氏が抱くその考え方は、前述のタイ拠点TENHIKO THAILANDを立ち上げた経緯にも、もちろん当てはまると言います。

2017年に「上海天彦祥商貿有限公司」は10周年を迎えた
2017年に「上海天彦祥商貿有限公司」は10周年を迎えた

気骨な人材がタイ拠点を軌道に乗せる。

天彦産業のタイ拠点TENHIKO THAILANDは、大阪のTWS、上海の上海天彦祥とともに、同社のトライアングル戦略を担う海外事業の要のひとつ。その始まりは2004年まで遡りますが、そこにもやはり「人とのつながり」を重視する樋口氏ならではのエピソードがありました。「当社の若手男性社員で、学生時代に東南アジアを中心にバックパッカーをしていた者がいるのですが、その道中で必要に駆られ英語を身につけたり、インドネシアの酋長の家に1ヶ月滞在したりと、型破りな行動力と世界に向けた広い視野を入社前から持っていました。その点を評価していた私は、初めてタイを視察する際に、急遽彼にも同行してもらうことにしたのです」。視察後、タイマーケットの巨大さを思い知らされ、早急な進出の必要性も感じた樋口氏は、帰国する便の機内ですぐに「タイにしばらくいてくれないか」と彼に打診したのだそう。迷いなく快諾した彼が、単身現地に駐在し始めたのは翌年の2005年のこと。机ひとつで始まったタイでの業務ですが、彼の手腕により2008年には現地法人化、今では30名のタイ人スタッフを抱えるまでに成長しています。

タイ拠点「TENHIKO INDUSTRIAL(THAILAND) CO.,LTD」の面々
タイ拠点「TENHIKO INDUSTRIAL(THAILAND) CO.,LTD」の面々

海外展開の好影響が、国内の事業にも。

トライアングル戦略が功を奏していることもあって、順調に軌道に乗っている同社の海外展開。本社のフロアでは、毎日のように英語や中国語でのやり取りが飛び交い、その環境が近年さらなる変化を生んでいると言います。「普段海外事業に携わっていない国内事業部のメンバーにも、グローバルな意識が潜在的に芽生えてきています。その結果、国内のお客様への営業活動の中でグローバルな視点も活かせるようになり、“中国ではこんな展開ができる”“タイで生産することも可能”といった具合に、ビジネス提案の幅が徐々に広がってきていますね。これは、当社にとって非常に大きな変化です」。そう語る樋口氏に、今後のビジョンについても伺うと、「人口減少を大きな要因とする日本マーケットの縮小に備えて、ますます海外事業には力を入れていきたいと思っています。例えば、ASEAN諸国との取引をタイのTENHIKO THAILANDで完結させるプランも構想中です。そのための人材育成にもすでに取り組み始めています。今後も、中小企業という枠や既成概念に囚われることなく、信頼関係や心のつながりを大切にしていきながら、新しいビジネスチャンスに果敢に挑戦していくつもりです」と、同氏らしい言葉で締めくくっていただきました。

本社(大阪)工場内での鋼材加工の様子
本社(大阪)工場内での鋼材加工の様子

日本一やり甲斐ある会社を目指す天彦産業のビジネス手法とは(前編)を見る

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海外展開を思うように進められていない中小企業も多い中、
「人」ありきの戦略で、見事海外での成功を収めている天彦産業。
社員の個性に則った采配と、時代を読み切る決断力がそこにありました。

同社のように、日本の中小企業には優れた技術や考え方を持った企業が多数存在していますが、
まだまだ世の中に知られていないのも事実です。
今後もジェグテックでは、このような特徴的な中小企業に焦点をあて、
より多くの方の目に触れるような活動を促進していきたいと考えております。

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