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新素材「LIMEX」で世界規模のカーボンニュートラルに貢献へ

株式会社TBM LIMEX事業本部 マネージャー ニュービジネスデザイナー 岡澤 友広 氏

株式会社TBMが、独自の技術で実用化した紙やプラスチックに変わる新素材が、
石灰石を主原料とする「LIMEX」です。

紙の代替としては、水や木をほとんど使用することなく製造ができます。
プラスチックの代替としては石油の消費を大幅に減らせるうえ、
回収して新しいLIMEX製品にリサイクルすることが可能です。
素材ビジネスと資源循環ビジネスを両立するTBMの「LIMEX」について聞きました。

石灰石を主原料とした新素材「LIMEX」
カーボンニュートラル等に貢献する製品・サービスの特長

独自に開発した新素材「LIMEX」を製造・販売しているのが、東京都千代田区に本社があるTBMです。2010年から紙とプラスチックの代替となる素材の研究開発を進め、翌年に会社を設立。宮城県白石市にパイロットプラントの白石工場を建設し、実用化に成功しました。

「LIMEX」は炭酸カルシウムなど無機物を50%以上含む複合素材です。ヒントになったのは台湾で開発されていたストーンペーパーでした。当初はストーンペーパーを輸入することから事業をスタートしましたが、石なので重く印刷が上手くできないことや、印刷機を傷めてしまうなど多くの課題がありました。

そこで、コンセプトはそのままで、全く違う方法で新素材を作ろうと考えました。LIMEXの主原料は、日本はもとより世界中に豊富な埋蔵量がある石灰石です。石灰石は、価格変動の激しい石油に比べると、価格は安いうえに比較的安定しているので、素材面においても、経済面においても持続可能性があると考えました。

開発された新素材の「LIMEX」は、主原料の石灰石と、石油からできる樹脂などを、独自の技術で組み合わせています。また、環境への配慮は素材や製造過程だけではありません。大きな特長は使用後に回収して、また新たなプラスチック代替品にリサイクルできることです。TBMのLIMEX事業本部マネージャーの岡澤は「LIMEX」を開発した思いを、次のように表現しています。

「資源循環も含めて、カーボンニュートラルの実現に世界規模で貢献していきたいと考えて事業を立ち上げました。社名のTBMは、Times Bridge Managementの頭文字をとったもので、何百年も挑戦し続ける、時代の架け橋となる会社として、サステナビリティ領域のトッププレイヤーを目指しています」

「LIMEX」は脱炭素に加えて、回収、循環を進めていくことで、世界中で課題となっているマイクロプラスチック問題の解決にも貢献する製品といえます。

紙やプラの代替品として実用化され再利用も
機能/特長/強み

「LIMEX」からできる製品の1つが、紙の代替品として実用化した「LIMEXシート」です。
紙の場合はパルプを原料に使うほか、製造過程では大量の水を使用します。水が豊富な日本ではあまり問題視されていませんが、世界的には水資源の枯渇は大きな課題になっています。この「LIMEXシート」は、主原料の石灰石と樹脂を混ぜ、薄くのばして製造するため、水の使用量は一般的な紙を製造する時と比べると、95%以上も削減することが可能です。また、ストーンペーパーの課題も克服され、重量は軽く、印刷適正の向上も実現しました。

LIMEXシート
LIMEXシート

もう1つの製品は、プラスチック代替素材としての「LIMEXペレット」です。これまでのプラスチック製品と同じ成型をすることでさまざまなプラスチック代替品を製造できます。
樹脂の一部に石油が使われているものの、50%以上を石灰石が占めるため、石油の使用量は大幅に削減されます。さらに、石油の使用量を削減できることで、原材料の調達から処分までの製品のライフサイクルにおいて、二酸化炭素の排出量も大幅に削減されることになります。

LIMEXペレット

TBMでは資源循環事業も本格化させています。使用済みとなった「LIMEX」製品や廃プラスチックは、回収されたうえで、再生材50%以上を含む素材「CirculeX」として再生されます。あわせて、これまでは焼却処理されてきた廃プラスチックを回収して、「LIMEX」と汎用プラスチックを自動選別して再生利用する世界初のリサイクルプラントを、神奈川県横須賀市にて運営予定です。。2022年9月から試験運用が始まり、年内か年明けには本格稼働する予定です。国内では廃プラスチック822万トンのうち、約70%が焼却されています。サーマルリサイクルとして熱回収はされているものの、マテリアルリサイクルは21%しかありません。世界的に資源の枯渇が懸念される中で、TBMでは焼却せずに再利用するモデルを作ろうとしています。

幅広い用途に使われている「LIMEX」
具体的な使用シーン、ターゲット、使用例、活用実績

「LIMEX」によって作られた製品は、私たちに身近なところで多く使われています。

紙の代替品として開発された「LIMEXシート」は、耐水性が高いのが特長で、水に濡れても拭き取ればそのまま使えて、紙よりも破れにくくなっています。具体的な使用例としては、飲食店などのメニュー表やPOPで、すでに大手のチェーンなどで使われています。サプリメントのパッケージなどにも利用されています。

また、品質の高さから、付加価値のある製品などにも活用されています。高性能なノートの表紙に使われているほか、外国産の高級自動車のカタログにも「LIMEXシート」が採用されました。高級自動車の購入を検討している人に対して、ブランドや品質の良さを伝える手段として選ばれています。

プラスチックの代替としては、さらに広い用途に活用されています。食品容器など、さまざまな日用品が「LIMEX」から作られているほか、ボールペン、プラモデル、建設資材などにも使われています。プラスチック製のレジ袋が有料化された2020年7月以降は、「LIMEX」からできた袋をレジ袋として提供する企業も増えてきました。

使用済みの「LIMEX」製品は回収して再利用することで、プラスチックの代替品にリサイクルされます。大手コンビニチェーンでは、利用客が持ち帰った袋を後日回収し、食器のプレートに再利用して地域の児童養護施設に寄贈する取り組みも行われました。再生材を50%以上含む「CirculeX」からは、「ごみからよみがえるごみぶくろ」や使い捨てない傘「サステナブレラ」が作られています。

「LIMEX」はすでに8000以上の企業や自治体で採用されていて、TBMでは今後さらに広い用途に利用できるよう、研究開発を進めることにしています。

左:ごみからよみがえるごみぶくろ/右:サステナブレラ

資源循環の普及に取り組む
カーボンニュートラルの取り組み又は企業の特長

TBMでは宮城県に白石工場のほか、量産工場としての多賀城工場を整備して、自社製品の量産体制を構築しています。前述の横須賀市のリサイクルプラントは、プラスチックのリサイクル工場としては国内最大規模です。

こうした自社の業務でも、カーボンニュートラルやサステナビリティの取り組みを徹底しています。白石工場と多賀城工場で使用される電力は、全て再生可能エネルギーで賄われています。また、企業活動における気候変動や水資源に対する環境パフォーマンスを評価する国際NGO「CDP」のアンケートに積極的に答え、スコアの認証を受けています。2021年は「気候変動」と「水」の項目で、ともにB評価を受けました。対応を始めた2017年は「気候変動」への評価はDでしたが、様々なアプローチによる脱炭素化を進めることで評価が上昇しています。

今後の課題は資源循環のさらなる普及です。TBMでは中小機構が開催した展示会に参加しているほか、J-GoodTechのマッチングによって、多くの企業との連携も期待しています。

「資源循環の取り組みは、地域の企業や自治体などの理解がなければ実現できないものです。当社の実績を知って頂くことで、現在は廃プラスチックを排出している企業に、その廃棄物を資源として有効に使うことにご賛同をいただきたいです。また、資源循環によって再生されたものも、もっと製造業などで活用していただければと思っています。多くの中小企業様とマッチングができて、地域ぐるみで資源循環を発信していきたいですね」(LIMEX事業本部 マネージャー岡澤友広氏)

さらに、「LIMEX」は海外にも広がっています。2021年にはベトナムに現地法人を設立したほか、韓国の大手財閥SKグループと135億円の資本提携に合意し、生分解性「LIMEX」の開発と事業化を進めています。TBMのカーボンニュートラルに貢献する取り組みは、これから世界でも加速しそうです。

ABOUT COMPANY

株式会社TBM
東京都千代田区有楽町1-2-2 東宝日比谷ビル15階
受賞実績:EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー 2019 ジャパン Exceptional Growth 部門、「大賞」を受賞
資本金:234億2993万円
従業員数:約271名

LIMEX事業本部
マネージャー ニュービジネスデザイナー
岡澤 友広 氏
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