多品種小量生産。約500社の取引先と数万種類の製品
「福岡は商業の街です。創業当初は地場の企業様からいただく装飾目的のめっきが中心でしたが、工場の移転(現住所)を契機に九州各地へ営業活動を展開し、徐々に顧客を増やしていきました。やがて1970年以降になると、北部九州に九州圏内の自動車・半導体産業の加工組立業種が集積するようになり、この2つに関連した仕事を積極的に増やしていきました。お客様のニーズに合わせて様々な開発を行い、多品種少量生産で約500社の取引先と数万種類の製品を生み出しています」と話す代表取締役社長の山田登三雄氏。九州電化の経営だけではなく、福岡大学の客員教授や、九州めっき工業組合の理事長を務めるなど、精力的に活動しています。
行政が向かう先をいち早くキャッチアップ。
中小企業の生き残り情報戦
九州電化が順調に新規顧客を開拓できているのには理由があります。「例えば福岡県であれば、県政としていかなる分野に注力していくかという基本方針や計画が定期的に発表されます。その中に“自動車産業”があれば“自動車”、“医療機器産業”があれば“医療機器”に関連した製品の開発に注力します。企業様から注文を頂いて開発を進める場合もありますが、それよりも“おそらくこんな製品が必要では?”と仮説を元に企画を立て、製品を提案していきます」。例えば国内に5箇所を数える重粒子がん治療施設の心臓部である線形加速器のめっき加工は、すべて九州電化が手がけています。重粒子線治療は炭素イオンを加速して重粒子線とし、がん病巣に照射する治療法です。粒子の速度を上げるため、加速器内面に導電性の高い表面処理を施す必要があります。この難題に対し、九州電化は新たな銅めっき加工技術を開発。400kwの高周波電力に耐えうる表面処理を可能としました。
「地域産業の向かう先は、行政の産業振興策に大きく左右されます。常にこれらの情報を得ていれば、どの分野に注力すべきかが自ずと見えてきます」と話す山田社長。会社組織の中では経営者であると同時に、情報の目利きに優れた外商担当として、積極的に取引先を開拓しています。
誰よりも早く、誰もしていない仕事を。
挑戦が企業を育てる
「今後伸びていくであろうというものに果敢に挑戦していくことで、会社とヒトを育てていきます」という同社は、5年、10年先を見据えて100品目以上におよぶ新製品の開発に挑戦をしています。めっき工場とは別に、最先端のめっき技術の研究と開発を行う「先端技術イノベーションセンター」を増設。「高い技術力は諦めないから得られるものです。諦めたら一流の会社にはなれません。社長の私にできることは、社員たちを信じて彼らを励ますこと。そして、彼らがやりたいようにさせてあげることですね」と話します。特筆すべきは、これら新製品開発への挑戦は、ほぼすべて実用化までこぎつけていて、取扱商品数は年々増え続けているということ。たとえば福岡県が「水素エネルギー社会の実現」に力を入れているという話を聞くと、「水素社会の構築においてめっきで何ができるか」をヒアリングして回る。そうした中で、大手重工業メーカーが、「海外から液体水素を運ぶタンクを新設するにあたり、優れためっき加工技術を持つ会社を探している」などの情報を掴んだ場合には、間髪を入れずにコンタクトを取るのです。こうすることで、大型のプロジェクトを自ら獲得しています。
「情熱と改善」で、さらなる高みを目指して
同社の挑戦する風土は、社内の様子からも見て取れます。同社には「情熱と改善部」という部署があり、工場の改善すべき課題へ積極的に立ち向かいます。また、めっき技術者の基礎教育とハイレベルなめっき技能者を育成する「めっき道場」を設立。資格取得にも積極的で、めっきに関する資格はもちろん、仕事をする上で役立つ資格の取得を推奨するキャリア形成支援制度があります。「工場内の椅子や休憩所の備品、新しい間仕切りなど、必要なものは社員が自分達で作っています。我々はものづくりの会社ですから、工夫を楽しむ風土を育みたい。自分達で工夫して作ったモノは大切に使い、必要あらばニーズに合わせて、さらに改良を加えていく精神を大切にしています」と山田社長。同社の飽くなき挑戦は、こうした人間力の育成から生まれているのかもしれません。
技術力と開発力がそろった会社として、めっきの世界を牽引する
現在、福岡を営業基盤とするほか、九州エリアにとどまらず全国に取引先を広げる同社。「今後は、航空宇宙の分野にも進出していきたいですね。福岡県が今後注力する分野のひとつです。そこで、先回りして、私の方で FAIN(福岡県航空機産業研究会)の副会長を務めさせていただいております。社長の仕事は仲間を作ることです。そこから新しい仕事がドンドン生まれていきます」と、人と語り合うことが大好きだという山田社長は、嬉しそうに語ります。「さらに企画開発ができる人材を増やして、絶え間なく新たな取り組みを創造していきたいです。組織としての理想は、企画開発職と製造職が半々くらいになること。高い技術力と開発力で、当社はこれからも日本のめっき産業を牽引していきます」。
FROM J-GoodTech
高い技術力と強い企画力を兼ね備えた九州電化。行政や国の方針をいち早く知り、
それに沿っていち早く新規開発に着手する同社の取り組みには、多くの中小企業にとって参考になると思います。
今後は、エネファーム事業者や分析・検査装置製造業などともご縁を深めるとともに、
その他の異業種とのマッチングによる新たな事業創出にも積極的に取り組んでいきたいとのこと。
「結果は後からついてくる」と語る山田社長は、「やる気があり、プラス思考で、
あきらめないチャレンジ精神の持った企業とジェグテックで出会いたい」と話します。
ジェグテックはさまざまな会社の技術、製品、サービスの情報を得られるビジネスマッチングサイトです。
これまで出会えなかった企業様とのビジネスマッチングの機会も得られますので、今後ともぜひジェグテックをご活用ください。