再生に不向きなプラスチックなどを固形燃料に加工
カーボンニュートラル等に貢献する製品・サービスの特長
エビス紙料は古紙問屋として1961年に大阪府で創業し、現在は香川県に本社を置いて中国・四国地方や関西圏を中心にリサイクル事業を展開しています。創業当初から60年以上にわたって循環型社会の構築に取り組んでいると見澤社長は説明します。
「段ボール等を集めて製紙会社に納める古紙のリサイクルがもともとの生業でした。のちにプラスチックや紙おむつなど新たな製品が増えたことで、プラスチックの再生にも取り組みはじめました」
現在では、リサイクルの方法は多岐にわたります。プラスチックや古紙を再生するマテリアルリサイクルに加えて、産業廃棄物や一般廃棄物の再生に不向きなものを再資源化しています。
プラスチックのマテリアルリサイクルを行っているのは、グループ会社のエコテックです。年間8000トンもの再生プラスチック樹脂を生産しています。
一方、再生に不向きなプラスチックや紙くず、繊維くずなどは、固形燃料のRPFに加工しています。固形燃料の製造工場は香川県、愛媛県、和歌山県の3県にあり、製造能力は国内トップクラスの7万トンを誇ります。ロシアのウクライナ侵攻や円安などからエネルギー価格が高騰している中で、国内の廃棄物から作る固形燃料の需要も高まっています。
価格が安く、脱炭素効果も高い固形燃料RPF
機能/特長/強み
エビス紙料が生産する固形燃料のRPFは、主に石炭の代替燃料として利用されています。石炭の使用に比べると、大きなメリットが2つあります。
1つは価格の安さです。RPFは石炭と同じ重量の場合、同じ熱量を持ちます。その一方で取引価格は、石炭よりも大幅に安くなっています。石炭は変動相場によって価格が激しく上下しますが、RPFは産業廃棄物によって作られているので、ある程度価格も安定しています。現在は燃料価格の高騰から、RPFも若干価格が上がっています。
もう1つのメリットは、石炭を使う場合と比べて、圧倒的な脱炭素効果があることです。RPFは前述の通り石炭と同じ熱量があるにもかかわらず、二酸化炭素の排出量は3割削減されます。
エビス紙料がRPFの生産に乗り出したのは2000年からで、全国でも先進的な取り組みでした。マテリアルリサイクルだけでなく、再生できない廃棄物の資源化に取り組み始めた理由を、見澤社長は次のように話しています。
「当時、廃棄物処理は、焼却や埋め立てを中心にされていました。当社も廃棄物処理業ですが、古紙問屋出身ということもあり、廃棄物の循環と有効利用を目的とし、固形燃料へのリサイクルに特化するようになりました。固形燃料は効率よくエネルギー回収されている、製紙会社や製鉄会社にて使用されています。」
日本初の焼却しない一般廃棄物の処理施設
具体的な使用シーン、ターゲット、使用例、活用実績
エビス紙料では再生できないプラスチックや紙くずから固形燃料のRPFを作るだけではなく、一般廃棄物である可燃ごみを資源化して、固定燃料のRDFを作る研究にも取り組みました。RDFは熱量こそRPFよりもやや下がるものの、可燃ごみを焼却せずに再資源化する点で、二酸化炭素の削減量はより大きくなります。
この技術を実用化したのが、グループ会社のエコマスターの事業として、香川県三豊市で2017年に稼働した「バイオマス資源化センターみとよ」です。日本で初めて「トンネルコンポスト方式」と呼ばれる処理方式を採用しました。
その仕組みは次のようなものです。家庭などから回収した可燃ごみを破砕し、微生物などと混ぜて発酵槽の中で分解処理します。その際、発酵槽内部は微生物の発酵によって約70度まで温度が上がり、微生物が分解できない、紙、プラスチック、布などを乾燥させます。よって乾燥に燃料を使う必要はありません。その後、乾燥させた紙、プラスチック、布などを選別しRDFを作るための原料とします。
このセンターは三豊市が従来の焼却炉を建て替える際に、焼却しないごみ処理方式にしようと考えて採用したものです。民設民営のため、市は建設費を負担していません。約6万人あまりの市民の家庭や事業所から出る年間1万トンもの可燃ごみから、約5000トンの固形燃料を生産しています。見澤社長によると、この全国初のごみ処理施設には、国内だけでなく海外からも視察が相次いでいるといいます。
「韓国や中国、遠くはカリブ海周辺や中南米の国々などから視察がきており、海外からも注目を集めています。」
グループのリサイクル率は99.3%
カーボンニュートラルの取り組み又は企業の特長
エビス紙料のグループでは、2020年に4万2300トンの産業廃棄物を受け入れ、約4万2000トンを資源化しました。リサイクル率は99.3%と高い数値を実現しています。さらに、石炭代替による二酸化炭素の削減効果は、年間1万3000トンに及びます。
創業当時からリサイクルに取り組んできたエビス紙料では、エネルギーを製造している観点から以前より、社内でも省エネルギー活動などの取り組みを進めてきました。エネルギー消費の削減目標を立て、照明はLEDに変更し、各種の機械もエネルギー効率が良い製品を使っています。さらに太陽光発電にも取り組んできました。循環型企業として社内外の取り組みを今後も進めていく考えです。
一方で、固形燃料のRPFとRDFの需要は、今後も高まることが予想されています。特にRPFに関しては、産業廃棄物が取り合いの状態になっていることから、斉藤総務は中小機構のJ-GoodTechを活用して、取引先をさらに開拓したいと話しています。
「J-GoodTechはこれまでセミナーなどに参加させていただいて、法人情報も掲載していただいています。RPFの原料でもある産業廃棄物をより確保できるように、内容を更新しながら情報を発信にしていきたいですね。また原料の確保だけでなく、当社のことを幅広くアピールできればと考えています」
産業廃棄物や一般廃棄物の再資源化は、日本ではまだまだこれからです。エビス紙料は「限りある地球資源の再活用」にこだわって、今後もリサイクルに取り組んでいきます。
ABOUT COMPANY
エビス紙料株式会社
香川県観音寺市大野原町丸井817−22
受賞実績:第一回ローカルSDGs四国表彰 審査委員特別賞
(株式会社エコマスター)
資本金:1,000万円
従業員数:50名