自由な発想で開発したい。
札幌の地で創業。
もともと金融関係のソフトウェアエンジニアとして活躍していた坂本氏。20年ほど前に出張で訪れた北海道を気に入り、いつかこの地での起業を思い立ちます。その後、着実に技術を身に付け、人脈を築いていった同氏。2008年、満を持してアーク・システム・ソリューションズを創業します。
「自由な発想で、好きなように開発したいと思ったのです。アジャイル(柔軟に仕様の変更や追加ができるプログラム開発手法)のような活動にも、すごく興味がありました。当時、サッポロバレー(札幌のIT産業の集積エリア)が全盛だった頃に起業した会社もすでに大きくなっていて、札幌での起業にすごく可能性を感じたんです」。
車載向け
組み込みソリューションに強み
アーク・システム・ソリューションズの事業の大きな柱のひとつに車載向け組み込みソリューションの試作開発があります。最近の自動車には前面にパネルがついていて車の状況を表示する機能がありますが、そういったHMI部分のソフトウェアや、レーンキープ、オートクルーズといった運転を補助する仕組みなどを受託開発しています。また、受託だけでなく、独自の自動運転技術ソリューションの開発も行っています。「カーナビなどの経路情報から、自立走行時の経路上の地点情報(WAYPOINT)を生成するシステム、ルールベース方式で動く自動運転のAIソフトウェアに対し、パラメーターチューニングを行ってシステムを最適化するといった技術を提供しています」。
北海道ならではの
AI活用方法を模索
そして今、最も力を入れているのがビッグデータ・IoT・AI事業です。ディープラーニングを用いた画像認識に強みを持ち、北海道に根付いた技術の研究開発に力を入れています。例えば、酪農での牛の動きをAIで分析し、異常を検知したらメールで知らせるシステム。酪農農家の人手不足の解消につながればと期待されています。また、積雪で標識や白線が見えなくなった道路をディープラーニングの画像認識だけで自動運転できるようにする技術の開発も進めています。これも雪の多い北海道ならではの研究開発です。「今後、AIやビッグデータ分析の事業の拡大には大いに期待しています。IT化の進んでいない農業や漁業などの分野において、AIを活用して効率を上げたいというニーズはたくさんあると思うんですよね」と坂本氏は話します。
形式手法を用いた
セキュリティ脆弱性検査
情報セキュリティ脆弱性検査の評価も行っています。これは、国際規格を中心に評価する仕組みで、設計書を検査したり、ソフトウェアを検査したりすることで、脆弱性を見つけていくというもの。「形式手法」と呼ばれる数学を用いて矛盾のないプログラムを設計開発する研究から生まれた技術で、その効果は実証済みだと言います。
「あるサプライヤーさんに、実際に開発したソフトウェアの仕様を提供してもらい、この手法で設計し直して開発したところ、不具合なしと評価されたのです。そんなことができたら奇跡だとまで言われたんですけれど、そのぐらいの効果があるんですよ。でも、この手法は設計段階にものすごくコストがかかってしまうのが難点なのです。不具合が出て修正するコストと比べてどうかというところで判断してほしいのですが」と坂本氏は語ります。
サポイン事業に
継続的に採択される
同社は中小企業庁が公募する「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」にも、2012年に採択されたのを皮切りに、その後も複数の事業で連続して採択され続けています。現在、サポイン事業として取り組んでいるのが、すでに紹介した「自律的自動運転の実現を支える人工知能搭載システムの安全性立証技術の研究開発」と「積雪寒冷地の交通弱者移動支援のための雪道走行を可能とする自動運転技術の開発」で、2021年3月まで続く予定となっています。こうした新しい技術の開発にも、同社は積極的に取り組んでいます。
札幌市ワーク・ライフ・
バランスplus企業認証
プログラム開発というと、夜を徹して働くというようなイメージがつきまといますが、アーク・システム・ソリューションズは2018年「札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業」の認定を受けました。「特にこのために何かをしたというわけではないんです。独立前は私自身、毎日、夜中の2時、3時まで仕事するのは当たり前というような働き方をしていました。それはそれで面白かったのですが、ソフトウェア開発というのはもっと自由で楽しい仕事のはずだという思いもあって、起業した時にとにかくみんなが働きやすい会社にしようと決めたんですね。時間単位の有給やLGBT対応など、働きやすさを常に考えて、就業規則を見直して運用しています。社員の平均残業時間も10時間を切っているんじゃないでしょうか」と坂本氏。
ともに研究開発をする関係
AIの活用がメディアなどで大きく取り上げられている割には、思うように事業が拡大していかないところに課題を感じているとのこと。「今は、1社だけの製品でどうにかなる時代ではなく、いろんな会社と連携して提案していかないといけない状況にあると思います。IoTソリューションと言っても、上から下までひとつのソリューションじゃないと意味がないのです。その上で、あるニーズに対して、それを解決するためにはどうしたら良いのかをクライアントと開発会社が一緒になって研究開発していけるような関係が理想ですね。北海道に根付いた技術で社会に貢献していきたいというのが大きな目標です」。
FROM J-GoodTech
アーク・システム・ソリューションズは、高いソフトウェア開発技術をベースに、
AIやビッグデータ、IoTなど先端技術の研究開発にも積極的に取り組んでいる企業でした。
普段、ジェグテックは世の中のニーズがどこにあるのかを把握するのに使っていらっしゃるとのこと。
今後は自社技術の情報発信の場としても活用していただきたいと思います。
日本の中小企業は優れた技術を活かして新たな事業に挑戦されている企業が数多くいらっしゃいます。
今後もジェグテックでは、そのような技術力や卓越したサービスを有する中小企業に焦点をあて、
より多くの企業の目に触れるような活動を促進していきたいと考えております。