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「里山の風景を取り戻したい。」
従業員4人で地球の環境に挑む。

株式会社アクト 代表取締役 尾北 俊博 氏

ABOUT COMPANY

徳島県吉野川市。畑と住宅街に囲まれたのどかな風景の中にアクトのオフィスと工場があります。
従業員は若干4名ですが、取引先は名だたる大企業が名を連ね、有名テレビ番組の取材が入ったこともあります。
それは、彼らが作る産業廃水を無害化する無機系中性系の凝集剤“水夢”に、世界の自然を守るチカラがあるからです。
小さな会社の、大きな夢について、代表取締役の尾北 俊博氏にお話を伺いました。

里山の風景を取り戻したい。ホタルに帰ってきてほしい

「私が小さい頃は、そりゃあ美しい里山でした。藍畑が広がり、水は澄んで、夏にはホタルが飛び交う。しかし、その風景は失われてしまいました」と、尾北氏は懐かしむように話し出しました。地元・徳島県出身。1983年にアクトを創業。ただし、当初の事業は、今のものとは全く違うものでした。「元々は建設コンサルタントとして、公共下水の設計などをしていました。その過程で、自分たちが手がける公共事業が生態系に影響を与えていることを肌で感じました。これはまずいことをしているのではないか、そう思っているうちにバブル崩壊。年々公共事業は減っていき、2010年前後にはピーク時の半分まで落ち込みました。これは事業転換を図らないといけない、と思ったときに、環境に役立つ仕事をしようと考えたのです」。

株式会社アクト 代表取締役 尾北 俊博氏
株式会社アクト 代表取締役 尾北 俊博氏

事業内容の大転換。
大学教授らと協力して水質浄化剤を開発

「時代は徐々に環境問題について注目が集まってきた頃でした。下水の設計をしていた経験上、今後は“排水処理”に世の中の関心が集まると考えたのです」。2002年に「土壌汚染対策法」が施行されたのを機に、アクトは大きく事業内容を転換させ、環境分野に参入しました。そして、徳島大学、香川高専、京都大学などの先生方と協力して開発したのが主力商品の“水夢”です。「簡単に言うと、排水の中の汚れを吸着させる薬です。製造業や印刷業を中心に、塗料、印刷用インキ、ボンド、クーラント液などの加工融液を扱っている会社に販売し、工場などの下水をキレイにすることができます」と尾北氏。現在は大企業から中堅企業を中心に、約400社と取引をしているとのこと。取引先を拝見すると、国内の大手自動車メーカーや一流企業の名前が連なっています。

主力商品の無機系凝集剤“水夢”
主力商品の無機系凝集剤“水夢”

小ロット多品目の時代。
排水に合わせて細かくカスタマイズ

「日本は環境問題後進国です。CO2には気を配っていますが、VOC(揮発性有機化合物)には無頓着な企業が多く、環境汚染や人体への健康被害が深刻です」と尾北社長は深刻な表情で語ります。VOCとはシックハウス症候群の原因などにもなる有害物質で、ヨーロッパを中心に海外では使用に強い規制がかけられている一方、日本ではまだ規制が甘いそうです。こういった有害物質や排水が工場などから河川に流されることで、日本各地で環境破壊が起こっています。そこで、排水を下水に流す前に“水夢”を使って中和させることで、環境に優しい水に変えることができます。「最近は、小ロット多品目の時代です。自動車からお菓子の包装紙まで、人の趣味嗜好に合わせてメーカーは様々な製品を小ロットで生み出しています。つまり、その分、排水の種類も変わってくるのです。私たちは、各地の取引先から排水を送ってもらい、その水に合うように“水夢”をカスタマイズして販売しています」。

全国から送られてきた排水
全国から送られてきた排水

従業員4名でも世界から注目される企業に。
アジア各国からの熱視線

日本国内での使用はもちろん、最近では海外からの問い合わせも多いとのこと。「東京で開催される大型の環境系展示会などに行くと、来場者の半分くらいは外国人です。特に、発展著しいアジア各国の企業は環境問題に直面しています。展示会で私達の製品に注目してくださる企業は非常に多いのですが、言語の問題もあってなかなか個別の取引までは発展しないのが現状です。簡単な英会話なら問題ないのですが、話が環境問題なだけに、使われる用語も環境系や化学系の専門用語になります。この通訳ができる人はなかなかいません」と尾北社長。しかし、美しい里山を取り戻したいという思いは、何も地元徳島に対してだけではありません。今後、こういったアジア各国の企業とも取引を増やしていきたいと意欲を見せます。

わずか数十秒で排水が透明になった
わずか数十秒で排水が透明になった

「排水」は会社の暗部。だからこそ、信頼しあって一緒に進める仲間を求める

アクトの取引は、ゆっくりと始まります。「まず、製品についての問い合わせが来ます。その後、メールや電話で何度かやり取りして、双方の信頼関係が築けた頃になって、やっと排水サンプルを送ってもらえます。というのも、企業からしたら自分の会社の排水の中身なんて、誰にも知られたくないわけです。でも、環境に良い取り組みをするには、まず一回、私たちに現状の手の内を晒さないといけない。そこまで行くには、事前に信頼関係を結ぶ必要があります」と尾北社長。「これからは水産資源に注目が集まるでしょう。我々の食べる魚の多くは天然ではなく養殖です。一箇所に魚を集めて成魚にするまで囲い込むということは、そこに糞などの汚れが大量発生するということです。こういった汚れも、私達のチカラでキレイにしていきたいです。また、マレーシアに行くとパーム油用の椰子の実が大量に打ち捨てられ、排水が海に流れていますが、パーム油を最も輸入しているのは日本です。その状況を、ただ見ているわけにはいきません」。最後に、社長に一番伝えたいことを伺うと、こう話してくださいました。
「私たちの目標は、ただ“水夢”を売ることではないのです。信頼しあって、手を取り合って、ともに美しい海や川を取り戻しましょう」。

尾北社長 事務所の玄関にて
尾北社長 事務所の玄関にて

FROM J-GoodTech

「美しい里山の風景を取り戻したい」という純粋な思いから、大きく事業転換を行ったアクト。
たった4名の従業員で大企業から嘱望される商材を生み出した同社からは、
「小さな身体でも大きな信念さえあれば勝負ができる」という強いメッセージが伝わってきます。
環境問題は、年々注目度が上がっています。
環境に対する社会の責任も増してきていて、もはや避けられない問題になっています。

日本の中小企業は優れた技術を活かして
新たな事業に挑戦されている企業が数多くいらっしゃいます。
今後もジェグテックでは、そのような技術力や卓越したサービスを有する中小企業に焦点をあて、
より多くの企業の目に触れるような活動を促進していきたいと考えております。

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