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国内・海外市場動向
インドの中小企業が取り組む脱炭素・SDGsビジネスの現状(2)

消費財を扱う中小企業の現状と課題

高い経済成長率を誇るインドにおいて、中小企業は重要な存在です。
特に、消費財を扱う企業は中小企業が多く、今後人口の増加に伴って消費が拡大することで、
大きな成長が期待されています。
その一方で、中小企業をめぐる環境には課題もあり、
欧米や東南アジアなどで広がっているSDGsビジネスなどへの対応も進んでいないのが現状です。
今回は、インドで消費財を扱う中小企業について現状と課題をみていきます。

インドの経済発展には中小企業の成長が不可欠

インド国内の中小企業の数は、中小企業の定義の違いや出典によって異なる数字が報告されています。インド政府の登録ポータルには2023年2月現在、1400万社以上の中小零細企業が登録されていて、その大半を零細企業が占めています。

また、別のレポートでは、2017年時点で登録済みと未登録の企業をあわせると、インド国内の中小企業は4250万社あり、国内の全産業の95%を占めていると推計されています。6000以上の製品を生産し、輸出総額の40%を占めるとみられ、特に消費財を生産する中小企業が多いとされています。

前回もお伝えした通り、インドの経済は高い成長を続けています。IMFによりますと、インドの名目GDPは2023年時点では5位につけていると推定され、2026年には日本を抜き、2027年にはドイツも抜いて、アメリカ、中国に次ぐ世界3位の経済大国になると予想されています。また、2023年半ばの推計値で人口が14億2860万人となり、中国の14億2570万人を抜いて世界一になりました。

人口の構成比は若年層の割合が高いことから、国内消費だけを見ても今後も拡大していくことは間違いありません。インドが経済発展を果たすには、中小企業も高い成長率を維持していく必要があります。

SDGs達成度ランキングは100位以下

消費財をめぐるビジネスで、ヨーロッパや日本、東南アジアなどで近年関心が高まっているのがSDGsの目標達成に貢献する製品です。SDGsは貧困の撲滅や気候変動対策など、2030年までの達成を目指す17の目標を定めたもので、経済大国であるとともに世界一の人口を誇るインドは、目標達成のために重要な役割を担っています。

ただ、インドは世界の主要20か国で構成するG20のメンバーの一員でありながら、一人当たりの名目GDPは20か国で最も低く、SDGsの進捗状況についても最も低い評価を受けています。

国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年発表しているSDGs達成度ランキングでは、インドの順位は2023年が112位。2022年は121位と、100位以下につけている状態です。

2023年のランキングでは、目標を達成できているのは目標12「つくる責任 つかう責任」と、目標13「気候変動に具体的な対策を」の2項目でした。全体的に改善傾向にはあるものの、目標2「飢餓をゼロに」をはじめ、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」など、全体の半分以上となる9つの目標達成に「大きな課題が残っている」と指摘されているのが現状です。

インドの消費財を扱う中小企業を取り巻く課題

SDGs達成度ランキングで順位が低いということは、裏を返せばインドには大きく改善する余地が残されていることになります。中小企業が目標達成に貢献できれば、ランキングも大きく変わってくると考えられるものの、中小企業を取り巻く課題は山積しています。

まず、インドの中小企業は、環境や社会への影響に関する知識が不足していると指摘されています。最新の情報に触れる機会がなく、世界の市場に存在する最新の技術について知らないケースが少なくありません。場合によっては、経営者に管理のスキルや企業家としての知識が不足していることもあります。これは地方に拠点を置く中小企業によくある傾向だといいます。

次に、中小企業の金融へのアクセスの悪さと、キャッシュフローにおける資金不足も大きな課題です。インドの中小企業の多くは組織化されていないため、取引の多くは現金で行われています。その結果、取引内容が会計帳簿に適切に計上されず、売上高や売掛金、買掛金、経費、在庫などに関するデータが存在していないことで、与信に必要な信用スコアを取得できなくなっています。実際に、インドの中小零細企業の多くは金融機関との取引がなく、融資を受けることが困難な状況にあります。

こうした融資の課題については、改善に向けた動きも出ています。インド政府は製造業振興策の「Make in India」を推進することとあわせて、中小企業向けのローンなどの支援事業の整備を進めつつあります。その中には日本が協力している事業も存在します。中小零細企業向けの省エネ支援事業は、日本の国際協力機構(JICA)が提供した低金利の優遇借款資金を原資にして、中小企業が省エネルギー設備を導入する際に貸付を行うものです。

インド政府は「Make in India」によって、インドを世界の製造業の中心拠点にするための政策を次々と打ち出しています。中小企業のイノベーションを促進し、金融をめぐる環境を改善することで、消費財を生産する中小企業についても今後成長する可能性が高くなっています。

インドの消費財のマーケットに進出するには

最後に、消費財を扱う日本の中小企業が、インドへの進出を検討する際のポイントをみていきます。

日本の企業と結びつきが強い自動車部品や工作機械などの分野は、インドの製造業の中でも成熟産業に位置づけられています。一方で、食品、衣料品、家具、革製品などの消費財については、インドでは未発展の産業と言えます。

こうした未発展の産業に進出する場合の方法の一つが、開発援助の視点を踏まえた事業展開です。JICAが実施している「中小企業支援・SDGsビジネス支援事業」でも、件数は多くはないものの、インドでの案件に取り組んでいる企業があります。

もう一つは、SDGsに貢献する考え方を踏まえた経営方針によって、事業を展開することです。未発展の産業にとっては付加価値になります。ただ、インドでは地域によってSDGsの浸透度に大きな差がある点については注意が必要です。

インドは世界の主要な経済大国の中で、最も高い経済成長率を誇ります。今後も経済成長が続いていくことは確実で、ここ数年のうちに名目GDPでは日本とドイツを抜いて、世界3位の経済大国になることが確実視されています。さらに、プライス・ウオーターズハウス・クーパーズ(PwC)の調査レポート「2050年の世界」によると、インドは2050年にGDPでアメリカを抜いて、中国に次ぐ世界2位の経済大国になると予想されています。

一方で、輸出に関しては、世界中で輸出額が増えているのに比べると、現時点では大きな伸びを見せていません。産業全体に占める製造業の割合も10%台半ばと低いままです。「Make in India」の政策によって、製造業が拡大し、輸出国への道を進むことができるのかどうか。その際には、インドに進出している日本の中小企業が技術力を生かして、インドからの海外への輸出に取り組んでいることも十分に考えられます。

現状ではインドに進出している日本企業は1400社程度と多くはなく、しばらくこの状態が続く可能性があります。それでも、中長期的に見れば、インドが巨大なマーケットであることは間違いありません。これから日本の中小企業がインドへの進出を考える場合、インドの経済発展の動きとSDGsの目標達成に向けた取り組みに、どのように関与していくのかも重要なポイントになってくるのではないでしょうか。

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