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国内・海外市場動向

メーカーへの提案力も備えた
二輪・自動車部品メーカー

SCC TECH CO., LTD. 社長 サラユート・チューパックチャローン氏

高度な技術力を活かし、二輪車や自動車向けの歯車やブレーキシュー(制輪子)、
ブレーキパッドといった部品加工を手掛けているSCC TECH CO., LTD.
もっとも得意とする歯車は、日本の商社とともに取り引きを拡大してきました。
日タイの強力なパートナーシップが同社の成長を牽引しています。

OEM専業の企業から
オリジナル製品も手掛ける企業へ。

下請けとして自動車部品を生産するOEM企業から、顧客に提案しながらともにモノづくりを行い、さらには自社オリジナル製品も手掛ける企業へ。圧倒的な技術力と提案力、豊富な実績をベースに事業領域を着実に広げているのが、SCC TECH CO., LTD.です。歯車、ブレーキシュー(制輪子)、ブレーキパッド、スタンピング(プレス加工)部品。同社はバイクや自動車向けにさまざま部品加工を行っていますが、もっとも得意とする分野が歯車。OEM部品を提供する下請けとして長く培ってきたノウハウをもとに、10年前には自社オリジナルの歯車生産にも踏み切りました。

「バイク向けの歯車は1万キロメートル走行すると交換が必要な消耗品。需要の多い市場です。オリジナル製品は工場から販売代理店へと卸し、そこからバイクの修理を行う一般消費者向けの店へと納入していますが、卸先は国内よりも輸出の方が多いですね。ベトナムやマレーシア、ミャンマー、カンボジアなどの近隣諸国が主な輸出先です」。

社長 サラユート・チューパックチャローン氏
社長 サラユート・チューパックチャローン氏

こうにこやかに話すのは、二代目として社長をつとめるサラユート・チューパックチャローンさん。大学卒業後、メルセデス・ベンツの工場でエンジニアとしてのキャリアを積んだ後、3年前にSCC TECH CO., LTD.に入社しました。

サラユートさんの父親である故・ソムキアットさんは弟さんと自動車部品の会社を営んでいましたが、2004年に互いの事業を棲み分け、新しくSCC TECH CO., LTD.を設立。日本のバイクメーカーの一次下請けとして、そして日本やアメリカの大手自動車メーカーの二次下請けとして業績を伸ばしてきました。

順調な成長を続けるさなかで起きたのが、1997年のアジア通貨危機です。前例のない経済危機を前にSCC TECH CO., LTD.は厳しい判断を迫られました。車の生産が激減し、経済がどん底に落ち込んでしまったいま、従業員をどうするべきか。解雇に踏み切るのか、あるいはなんとか雇用を維持するのか。先代の判断は後者でした。サラユートさんは言います。

「アジア通貨危機もいつかは必ず終息する。いずれ経済が復活した後に仕事ができる人材がいなければ会社は立ち行かない。そう考えた父は雇用を維持することを決意し、一人も辞めさせませんでした。とはいえ仕事はまったくないので、工場の中で改善活動に取り組んだり、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底化を図ったそうです」。

機械や設備などハードをどんなに整備し充実したとしても、それらを動かすのは「人」。「人」がいなければモノづくりは成立しません。「人」の創意工夫や叡智がなければ、モノづくりを進化させることもできません。
アジア通貨危機が過ぎ去り、タイの経済が復調の兆しを見せ、車やバイクの需要が増え始めた2000年頃から、同社は復活の道を力強く歩み始めました。ソフトの重要性、人材の大切さに目を向け、苦しい時期にこそ基礎体力づくりに力を注いだ先代の経営判断のたまものです。

メーカーへの高い提案力を活かし
パートナー企業として共に製品を作る。

メーカーへの提案力が高いのもSCC TECH CO., LTD.の大きな特徴といえます。OEMメーカーのほとんどは、顧客が作成した図面通りに製品を作り納入しています。それがOEMの役割でもあり、企業としては1つのあり方。同社も例外ではありませんでした。しかし、得意分野である歯車のOEMに関しては違う道を模索しました。

「父の代から歯車の製造については日本人技術者から教えを請い、技術力を磨いてきました。経験もノウハウも豊富にあるので、お客様から図面が来ると作る前に“こういう問題が起きるかもしれない”、“この仕様に変えたほうが問題なさそうだ”とある程度予測できるようになってきたんですね。そこで、5年前にある日系のバイクメーカーが新モデルを開発する段階でこちらから新しい仕様を提案してみました」。

OEM企業からの提案をメーカーはどう受けとめたのか。当初の反応は厳しいものでした。この図面通りで行く。メーカーからの回答を受けて図面のままに作った部品は、SCC TECH CO., LTD.が予想した通り、すぐに不適格品であることが発覚しました。「その製品を持って説明にうかがったところ、今度は納得していただけました。こちらの提案どおりに試験生産をすることになったんです」。

ここから、発注側であるメーカーの同社に対する意識や姿勢がガラリと変わります。材質を変えた方がいい。厚みを変更してみてはどうか。別の加工方法にトライしてみよう。高い技術力と豊富な実績があるからこそ可能なSCC TECH CO., LTD.からの提案は、いまではメーカーに否定されることなく、どんどん取り入れられています。歯車というジャンルに関しては、もうSCC TECH CO., LTD.は単なるOEMではありません。オリジナルの歯車を作るメーカーであると同時に、「良い製品、高い機能の製品を作る」という共通のゴールに向け、手を携えて顧客とともに歩み、OEM製品を作り上げるパートナー企業でもあるのです。

製造工場の様子
製造工場の様子

品質、コスト、納期を重視
日本のパートナー企業とともに成長。

主に日系企業を対象に取り引きを拡大してきた同社の歩みの中で、重要な役回りを果たしてきたのがM貿易です。「私たちが作っている部品は日本の商社が買って輸出をしていますが、もっとも早く取り引きが始まったのがM貿易。もともとは弊社が日本の大手企業向けに作っている歯車に興味を持ったということで、先代の時代に問い合わせがありました。それがきっかけで、いまではM貿易のブランドとして歯車を作るようになり、輸出もしています。弊社はM貿易と一緒に成長してきたといっても過言ではありません。現在も、月に一度はM貿易の担当者と定期的に会合を持っていますよ」。

得難いパートナー企業とのビジネスは極めて順調に進んできたそうですが、問題がまったくなかったわけではありません。「納期の遅れ、品質への疑問点など、問題が起きれば、それを一つずつ丁寧に検証し解決に取り組んできました。日本側から変更を依頼されるときにはちゃんと根拠があることもよく分かっています。長くやっていますから、工場長も生産管理の責任者も、“日本人はここが許せない”というラインはよく理解してくれていますね」。

日本以外の国ともビジネスが広がっていますが、サラユートさんは日系企業をこう高く評価しています。「日系企業とつきあう上での重要なポイントは、Q(Quality)、C(Cost)、D(Delivery)。この3つの定義は日タイでは若干のズレがありますが、日本側が求めるQCDを守れば、日本の企業は長く誠実につきあってくれる。一言で言うと信頼できますね。商売でごまかしたり、不正がないのがありがたい。こういってはなんですが、他の東南アジアの国の企業の中には、機会があればこちらをだまそうという会社も多いんです。できれば、日系企業との取り引きをさらに強化したいと思っています」。

時間に厳格すぎる、品質にうるさい、細かな点にこだわる、融通がきかない、決断までに時間がかかる。日系企業に対してはいろいろなシビアな声も聞かれますが、評価する声が多いのも事実。信頼性の高さはその1つです。

新しい領域への挑戦のため
マッチングの場を求めたい。

SCC TECH CO., LTD.の今後について、サラユートさんは次のような未来像を描いています。「オリジナル製品は、現在は歯車だけですが、いずれはブレーキパッドにも広げたい。ブレーキパッドも歯車と同じように交換が必要な部品ですから、マーケットが見込めます。ただ、今のところ自社だけでは生産体制として不十分なので外注先に発注し、自社ブランドとして販売しています。これを自社で生産できるように持っていくことが目標ですね」。

新しい領域への挑戦にも意欲を見せます。「バイクや自動車の部品をメインにずっとやってきましたが、家電品や電子機器、医療機器なども受注できる体制を整えたい。加工度や付加価値が低い部品はタイ以外の国に流れる傾向があります。高付加価値で、品質管理が難しい製品を作れるようになれば、必ず自己成長につながるはず。問い合わせがあれば積極的に扱っていきたいと考えています」。

医療機器や電子機器など新しいジャンルへ事業を拡大する上で、期待しているのが出会いの場です。しかしながら、これまで日本にも足を運び、何度もビジネスマッチングの場には参加したものの、思うような成果は得られなかったといいます。「参加企業の数や成約見込み金額などを追いかけても意味がない。マッチングで大事なのは量よりも質。互いのニーズがうまく合致する出会いの場をぜひ実現してほしいですね」。

バイクや自動車向けの部品を作る企業として実力を蓄えてきたSCC TECH CO., LTD.。有効な出会いの場が得られれば、その実力はさらに大きく花開きそうです。

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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