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国内・海外市場動向
大きなポテンシャルを持つ地熱発電の現状と課題

脱炭素社会のための新エネルギーを考える③

自然界に存在する環境や資源を利用し、
二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは、
脱炭素社会の実現に向けて導入の拡大が期待されています。

この連載では再生可能エネルギーのうち、比較的規模が小さな発電が可能で、
中小企業でも取り組むことができる新エネルギーに焦点を当てて、
バイオマスと小水力の現状をみてきました。

この2つのエネルギーに比べるとまだ利用が進んでいないものの、
大きなポテンシャルを秘めたエネルギーが日本にはあります。それは地熱です。

地熱発電は1966年に本格的な発電所が運転を開始するなど、
国内では歴史もあり、東北や九州を中心に大規模な発電所が展開されています。
最近では小規模な地熱発電を行う地域も出てきていて、さらなる拡大が期待されています。

2030年までの世界共通の開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)でも、
重要な課題として挙げられている地球温暖化対策とエネルギーの問題。
その解決策の一つとして可能性を秘めた地熱発電について考えてみます。

日本の地熱資源量は世界第3位

再生可能エネルギーの導入拡大が望まれる中、国内で大きな期待がかかっているのが、新エネルギーに分類されている地熱発電です。日本列島は火山帯に属するため、地熱の利用は戦後早くから注目されていました。

1966年に国内で初めて商用運転をはじめたのは岩手県八幡平市の松川地熱発電所で、現在も稼働しています。地熱発電所は東北や九州を中心に展開されています。全国の総発電量はまだまだ少ないものの、安定して発電ができることが大きなメリットです。

2015年7月に経済産業省が策定した「長期エネルギー受給見通し(エネルギーミックス)」では、地熱発電の設備容量を2030年度までに現在の3倍に当たる160万kWにすることが目標に据えられています。

この目標を踏まえ、経済産業省では地熱発電の更なる導入拡大を図ろうと、2015年度から「地熱発電の推進に関する研究会」を開催。目標達成のために様々な検討が行われています。

なぜ地熱発電への期待が高まっているのでしょうか。それは、エネルギー資源の少ない日本にとって、地熱は大きなポテンシャルを秘めたエネルギーだからです。日本の地熱資源量は2347万kWで、世界第3位の規模を誇ります。

しかも、地熱発電所を開発して適正に利用すれば、地熱は枯渇することがないので永続的に利用できます。発電に使った高温の蒸気や熱水は、農業用のハウスや魚の養殖、地域の暖房などにも再利用が可能です。日本にとって理想的なエネルギーの一つといえます。

地熱発電所

地熱発電所は温泉のある地域を中心に開発

国内最大の発電所は、大分県九重町の八丁原地熱発電所です。出力は11万kWを誇り、一般家庭約3万6000世帯分の電力を賄う能力があります。1977年に1号機が運転を開始し、1990年には2号機が稼働しました。さらに、2006年には日本で初めてバイナリー発電が導入されました。

バイナリー発電とは、地熱流体の温度が低く十分な蒸気が得られない場合に、地熱流体を使ってより沸点の低い媒体を加熱して、媒体の蒸気でタービンを回して発電するものです。代表的な媒体には沸点が36度のペンタンなどがあります。バイナリー発電は太陽光や風力、小水力、バイオマスと同様の新エネルギーとして位置づけられていて、今後普及が期待されている新たな技術です。

地熱発電所の開発ができるところは火山や地熱がある地域で、その多くが温泉地と重なります。八丁原地熱発電所がある九重町は、町内に温泉地が点在しています。大分県別府市の杉乃井ホテルや、鹿児島県霧島市の霧島国際ホテルなど、温泉の泉源を持つ規模の大きなホテルが地熱発電所を作って、自社の電力を賄っているケースもあります。

ただ、地熱発電には温泉地や観光地で開発されるがゆえの課題もあります。地熱の資源の多くは国立公園地域など、自然公園に存在する場合が多く、開発する際には環境に配慮した取り組みが不可欠になります。開発のための具体的なルールづくりや、環境保全対策技術の向上などはまだ道半ばで、解決されるべき課題も多いのが現状です。

また、温泉施設や旅館経営者、地域住民にとっては、地熱発電所ができることによって、温泉に何らかの影響が出るのではないかとの懸念があります。そのため事業者と地域が十分に話し合いながら開発を進めていく必要があります。

八丁原地熱発電所では、事業者である九州電力が町や地域の代表者の立ち会いのもとでモニタリングを行って、湯量や湯質の変化を測定。特に大気の環境に関しては30年間にわたって経年変化を調査することで、住民の理解を得ています。

地熱資源に恵まれた日本

地熱資源で持続可能なまちづくり

豊富な地熱資源を生かしたまちづくりを進め、注目されている地域があります。熊本県小国町です。面積の80%を森林が占めているほか、複数の大きな温泉地があり、農林業と観光業が主な産業の町です。

町内では2014年以降、小規模な地熱発電所が次々と運転を開始しています。一つはわいた温泉郷の岳の湯地区にある、わいた地熱発電所。約2000kWのフラッシュ発電を行なっています。フラッシュ発電とは主に200度以上の高温の地熱流体を活用して、蒸気の圧力でタービンを回し発電する方式です。

岳の湯地区は町内でも特に地熱資源が豊富な地域です。集落を訪れると、田畑や道路などのあちこちから湯けむりが立ち上っています。各家庭には地熱を利用して食材を調理する蒸し場が設置されているほか、台所や風呂場には湧き水を蒸気で熱交換して引きこんでいます。

さらに地熱を利用してシイタケなどを乾燥する小屋を多くの家庭が持っているほか、この乾燥小屋の仕組みを活用して、各地に地熱木材乾燥施設を町と森林組合、製材所が一緒に整備しています。

わいた地熱発電所は、地元住民26人が出資した合同会社によって設置されました。その後も出資者は増えています。発電所がある場所は以前、国の特殊会社である電源開発株式会社が大規模な発電所を開発しようとした場所です。当時は住民が反対し、電源開発株式会社は2002年に撤退しました。その後、東日本大震災の発生により再生可能エネルギーが注目され、住民が地熱発電に理解を示すようになり、地域の規模に合った発電所を建設したのです。

このほか小国町では、温泉旅館を経営する業者が建設した小国まつや発電所や、杖立温泉熱バイナリー発電所、石松農園温泉熱発電所などが次々と稼働しています。小国まつや発電所では、発電後の熱水を利用した農業ハウスを建設してブルーベリーを栽培し、商品化につなげました。

さらに2016年にはエネルギーの地産地消を目指して、小国町と町内の団体、金融機関などが出資して、地域新電力会社ネイチャーエナジー小国が設立されました。小国町と地域住民の取り組みは、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標15「陸の豊かさも守ろう」の達成を目指すもので、それぞれの取り組みがシナジー効果を生み出しています。

大きな課題は新規開発地点の開拓

地域ぐるみで地熱を利活用し、小規模な地熱発電所が次々と立ち上がっている小国町は、全国でも先進的なケースです。このように大きな可能性を秘めている地熱発電ですが、前述の「長期エネルギー自給見通し」で定められた地熱発電の開発目標は、現状では達成が難しい見込みとなっています。

現在調査や開発が進められている地熱発電所が全て完成したとしても、2030年の発電容量160万kWの目標には、約60万kWほど不足すると考えられています。せっかく資源はあるのに使いこなせていない状況です。そのため、新規開発拠点の開拓が大きな課題となっています。

地熱開発の可能性がある地域は、国立研究開発法人産業技術総合研究所などがまとめている空中物理探査や、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によるヒートホール調査など、既存の調査をもとに選定されています。

JOGMECが公表している資料によると、「ポテンシャルが高く、既往調査も多い地域」は八幡平、湯沢・栗駒、くじゅう、霧島の4地域。「ポテンシャルは高いが、既往調査は不十分な地域」が阿寒・屈斜路(弟子屈)、大雪山(上川、上士幌)、武佐岳、豊羽・阿女鱒、草津、富山、奥飛騨、雲仙、薩南の9地域。さらに「ポテンシャルは中程度存在するが、既往調査が不十分な地域」は12地域あるとされています。

こうした地域での地熱開発を実現するには、各機関による調査をさらに推進することや、発電所建設に結びつけるための事業環境の整備が必要といえます。

また、他の新エネルギーにも言えることですが、ある程度の規模の地熱発電所を建設するのであれば、地域の理解を得ることが非常に重要です。その際には事業者は自治体とともに計画を検討し、地熱発電によって考えられる影響を十分調査した上で、地域住民と合意形成を図っていく必要があります。

地熱は掘削技術も含め、まだまだこれから発展するエネルギーです。規模が小さな地熱発電所であれば、方法によっては中小企業や地域住民が建設して、運営することも可能です。二酸化炭素を排出せず、永続的な利用が可能な地熱に、もっと目を向けてみてはいかがでしょうか。

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