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国内・海外市場動向
活発化する小水力発電の建設

脱炭素社会のための新エネルギーを考える②

太陽光や地熱、風、水など、自然界に存在する環境や資源を利用する再生可能エネルギーは、
化石燃料のように枯渇することはなく、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスも排出しません。
2030年までの世界共通の開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)の17の目標のうち、
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と目標13「気候変動に具体的な対策を」
を実現する上でも注目されています。

再生可能エネルギーの中で、日本で以前から活用されてきたのが水力発電です。
ただ、水力発電と聞くと、大きなダムを使った発電をイメージするのではないでしょうか。
近年活発化しているのは、新エネルギーの一つに位置付けられている小水力発電施設の建設です。
特に小水力発電は、河川以外にも農業用水や上下水道など、
さまざまな水力を利用した技術が開発されつつあり、今後も拡大が期待されています。

このコラムでは、中小企業でも取り組むことができる新エネルギーの現状について考えます。
連載2回目となる今回は小水力発電の現状と、計画から運転開始までのプロセスをみていきます。

水力は日本にとって貴重なエネルギー源

特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所の推計によりますと、2020年度の国内の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合は、前年の19.2%から21.2%に増加。初めて20%を突破しました。

その中で最も大きな割合を占めているのが、太陽光発電です。国内の発電電力量における割合は8.9%。太陽光発電は2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)が導入されたことにより急激に増加し、この10年間で約22倍に伸びています。

この太陽光発電と並ぶ重要なエネルギーが水力です。水力発電は太陽光発電に次ぐ7.8%の発電量を誇ります。太陽光発電と異なるのは、長年にわたって同規模の発電量を維持している点です。10年前と比べても、それほど大きく変化していません。

水力による発電のメリットをいくつか挙げてみます。一つは安定供給ができること。自然の条件によらず、一定量の電力を安定的に供給できます。もう一つは、長期稼働が可能なことです。一度発電所を作れば数十年にわたって発電できます。もちろん、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーでもあります。

さらに重要なのは、水力が国内で賄うことができるエネルギー源である点です。日本は水資源に恵まれていることから、水力は昔から発電に利用されてきました。化石燃料のように輸入に頼る必要がなく、純国産の再生可能エネルギーであることも、水力発電の大きなメリットといえるでしょう。

注目される小水力発電

国内発電量に占める水力発電の割合が7.8%とお伝えしましたが、実は水力発電には2種類あります。大きなダムなどを活用した大規模水力発電と、身近な場所で水力を利用する小水力発電です。7.8%の内訳は、大規模水力発電が5.8%、小水力発電が2%となっています。

近年注目されているのが、新エネルギーに分類されている小水力発電です。小水力発電は発電出力が1000kW以下と定義されています。河川や農業用水、上下水道設備の水の流れを利用して、水車を回して発電します。

国内では1945年の終戦直後から1960年頃にかけて、電力不足の解消のために小水力発電所の建設が活発化した歴史がありました。特に中国地方などでは当時建設された発電所が現在も稼働しています。

水資源に恵まれた日本

こうした歴史を通じてノウハウが蓄積されていることもあり、現在でも新たな技術が開発されています。例えば、鹿児島県薩摩川内市の小鷹水力発電所は、全国的にも珍しいらせん水車を使った発電所です。最大出力は28kWと小規模ですが、らせん水車を使用することで落差が低い場所でも高効率の発電ができます。

また、静岡県長泉町のニコニコ水力発電所は、市街地を流れる農業用水路を活用しています。水路に水車を設置して、水の力で水車を回して発電します。毎時8kWの発電量で、年間では一般家庭約10軒分の年間消費電力を生み出しています。

上下水道設備を活用しているのは、千葉県市川市にある千葉県水道局妙典給水場の妙典発電所です。水道管にマイクロ水力発電設備が設置され、浄水場から配水池に水を送る際の水の圧力と流量エネルギーを活用しています。このように、様々な形態の水力発電所の建設が各地で活発化しているのです。

ダムを活用した大規模水力発電

中小企業が作った小水力発電所

小水力発電所を建設するためには、河川や水路などを長期的な視点で調査する必要があります。また、これまで設備がない場所に新たに建設することから、建設コストの高さが課題になります。

こうした課題をクリアして、中小企業が小規模発電所を事業化した事例があります。東京都檜原村の檜原水力発電が運営する、水の戸沢小水力発電所です。水の戸沢は檜原村を流れる神戸川の支流で、約91メートルの落差を生かして発電しています。最大出力は49kW。発電した電気はFIT制度により東京電力に売電しています。

檜原水力発電は、地元の土木工事業者の翠高庭苑が15年に設立。中小企業が小水力発電所を建設するのは東京都内では初めてでした。近くに流れる川を何かに利用できないかと長年検討していたところ、東日本大震災を契機に持続可能な社会につなげていこうと考え、小水力発電所の建設に踏み切りました。

ただ、水力発電のノウハウを持っていたわけではありません。具体的にどのように事業を進めていけばいいのか分かりませんでした。

そこで檜原水力発電が活用したのが、資源エネルギー庁の支援プログラム「再エネコンシェルジュ」事業です。事業性の推計と評価に始まり、実際の設計や落差の確保の方法、水車や発電機の選び方などについて助言を受けながら、計画を進めていきました。

取水口に採用したのは、オーストリア・Stocker社製の「Qベアーコアンダ取水設備」。電気工事は別の企業が協力しました。しかし、新たな課題が浮上します。それは建設費のコストがかかるにもかかわらず、資金調達が困難だったことです。

関係機関との調整で融資や許認可を実現

水の戸沢小水力発電所の総事業費は、約9000万円を予定していました。ところが、小水力発電事業に取り組むのは初めてで、実績もなかったことから、金融機関から融資を受けるのは難しい状況でした。融資を受けられたとしても、通常の金利であれば採算性は確保できないとみられていました。

そこで、融資についても「再エネコンシェルジュ」が支援に乗り出しました。金融機関単独ではなく、西武信用金庫と日本政策金融公庫との協調融資を提案。双方が2分の1ずつ融資することで、7000万円を15年の期間で融資することが決まりました。日本政策金融公庫の低利の融資によって、事業の採算性も確保できる見通しがつきました。

もう一点、事業開始までに時間がかかったのが、許認可の問題をクリアすることです。発電用に取水した後に維持しなければならない河川の適正な水量について、明確な基準がなかったため、河川占用の許認可権を持つ檜原村もなかなか判断ができませんでした。

そのため、檜原水力発電と資源エネルギー庁、檜原村の担当者が、何度も会合を重ねて話し合いました。最終的には旧建設省河川局が1988年に出した通達「発電水利権の期間更新時における河川維持流量の確保について」を活用することで、檜原村とも調整がつき、水利権の許可を得ることができました。

会社設立から2年後の2017年6月に建設工事が始まり、翌年2018年4月に発電所は運転開始にこぎつけました。檜原水力発電ではこの小水力発電所で実績ができたことで、今後は檜原村内の別の場所でも発電所の建設を検討しています。

無料でサポートする「再生エネコンシェルジュ」

檜原水力発電のように、異業種で全くノウハウがない中小企業でも、小水力発電所への参入は可能です。国内には小水力発電のために利用できる場所はまだまだたくさんあり、小水力発電の開発の余地は十分にあるといえます。

小水力発電をはじめとする再生可能エネルギー事業の導入をサポートするのが、檜原水力発電も活用した資源エネルギー庁の「再生エネコンシェルジュ」事業です。この事業では、再生エネルギー事業に取り組む事業者や自治体を無料でサポートしています。

サポートは相談から始まり、事業計画の策定、公募によって事業化までの支援も行います。相談では事業計画を聞いた上で、国が実施している様々な支援施策から最も適したものを紹介します。

事業計画を策定する際にも、再生可能エネルギーの事業が観光やまちづくりなど、地域が抱える課題の解決と連携できるように支援します。地域活性化などの広い視点で考えることで、雇用の増加にもつながるほか、再生可能エネルギーの活用による社会貢献活動が可能になります。

小規模水力発電

小水力発電は太陽光発電とは異なり、昼夜を問わず発電できるため、一定量の電力を安定的に低コストで供給できます。このため、全国各地の山間部を中心に、自治体や事業者によって新たな発電所の建設が進められています。地域密着型のエネルギーを生み出したいと考えているのであれば、小水力発電所の導入と活用を検討してみてはいかがでしょうか。

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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