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国内・海外市場動向
森林資源を活用したバイオマスの現在

脱炭素社会のための新エネルギーを考える①

持続可能な社会を実現するために、2015年に国連で採択された
2030年までの世界共通の開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)。
17の目標と169のターゲットが決められており、社会問題や環境問題など幅広い分野の解決を目指しています。

17の目標はどれも重要ですが、特に先進国で優先度が高い課題がエネルギー問題と地球温暖化対策です。
日本も2020年10月、当時の菅義偉首相が2050年までに温室効果ガスの排出を
全体としてゼロにして、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を目指すと宣言しました。
そのために欠かせないのが再生可能エネルギーの活用です。

再生可能エネルギーには大規模な水力発電のほか、発電規模が小さく、まだ普及が十分に進んでいない新エネルギーがあります。
新エネルギーは、地場の中小企業や地域住民らによる開発も可能で、今後の普及が期待されています。

このコラムでは中小企業でも取り組むことができる新エネルギーの現状について考えます。
1回目は、循環型社会を構築できるバイオマス発電についてみていきます。

再生可能エネルギーは持続可能な社会の主力に

世界共通の課題の一つが、地球温暖化対策です。地球が温暖化することによって海面が上昇し、世界中で陸や海の生態系の破壊が進み、豪雨や干ばつなどの災害が多発しています。温暖化の原因になっている温室効果ガスには様々なものがありますが、影響が大きいガスが二酸化炭素です。

産業革命以降、化石燃料の使用が増えたことで大気中の二酸化炭素の濃度が増加。その後も産業活動が活発になるにつれて、二酸化炭素やメタンなどが大量に排出されるようになりました。これらの温室効果ガスの濃度が大気中で高まると、熱の吸収が増え、気温が上昇します。これが地球温暖化のメカニズムです。

二酸化炭素を減らし、化石燃料の使用を減らすという点で世界中で注目されているのが、再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーとは、太陽光や地熱、風、水など、自然界に存在する環境や資源を利用するエネルギーのことを指します。

化石燃料の石油・石炭・天然ガスなどは、使い続けるといずれ枯渇します。これに対して再生可能エネルギーは自然の中にあるエネルギーを利用するので、化石燃料のようになくなることがありません。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスも排出しません。繰り返し使えて枯渇しない、「再生できる」エネルギーです。

2015年に国連で採択された、持続可能な社会を目指す世界共通の目標であるSDGsでも、地球温暖化対策やエネルギー問題は重要な課題です。2030年までの実現を目指すSDGsの17の目標でも、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」と、目標13「気候変動に具体的な対策を」で明確に位置づけられています。再生可能エネルギーは持続可能な社会の主力となるエネルギーとして期待されているのです。

廃棄物の再利用や減少につながるバイオマス発電

再生可能エネルギーによる発電方法には、次のようなものがあります。ソーラーパネルを使う太陽光発電。水が流れる力を利用する水力発電。巨大な風車が風を受けて回転する力を利用する風力発電。火山や温泉がある地域で地球内部のマグマの熱を利用して発電する地熱発電。これらはすべて自然の力を利用したものです。

再生可能エネルギーのうち、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令」で規定された10種類が、新エネルギーとされています。新エネルギーは技術的に実用段階であるものの、普及が十分に進んでいないものを指します。

新エネルギーのうち、代表的なものがバイオマスです。バイオマスとは動植物などから生まれた生物資源の総称です。植物は燃やすと二酸化炭素を排出しますが、成長過程で光合成によって大気中のCO2を吸収しています。その点から、バイオマス資源を燃料にした場合、二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロになり、二酸化炭素を排出しないものとされています。これがカーボンニュートラルの考え方です。

バイオマス資源の代表的な活用方法がバイオマス発電です。直接燃焼したり、ガス化して燃やしたりしてタービンを回し、発電機を動かします。バイオマス発電はある程度技術開発が進み、現在では様々な生物資源を有効活用できるようになりました。国内のバイオマス発電では、間伐材や可燃ゴミ、家畜の排泄物など従来は捨てていたものを燃料にしていることから、廃棄物の再利用や減少を実現し、循環型社会の構築に寄与しています。

バイオマス発電イメージ

国内の代表的なバイオマス発電所を挙げてみます。木質系の燃料のみを使う発電所として国内最大の発電規模を誇るのが、神奈川県川崎市にある京浜バイオマス発電所です。この発電所は昭和シェル石油グループが、2011年に閉鎖した京浜製油所扇町工場の跡地の一部に建設し、15年11月に営業運転を開始しました。

使用される燃料は、海外から輸入する木質ペレットとパームヤシ種殻など。出力は4.9万kW、年間の発電量は3億kWh(キロワット時)で、一般家庭の使用量に換算すると8万3000世帯分に相当します。発電した電力は再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を通じて売電されています。

このほかにも、製材業者や森林組合など官民10の団体が出資した岡山県真庭市の真庭バイオマス発電所が出力10296kW。大分県日田市のグリーン発電大分は、主要産業の林業や製材業で発生する木くずを利用して、出力5700kWの発電を実現しています。

出力は60kWと小規模な兵庫県神戸市のコープこうべ廃棄物処理施設は、食品工場で豆腐、麺、パンなどを製造する過程で発生する生ゴミと、排水処理施設から排出される汚泥をメタンガスに変換。電気やエネルギーとして工場で再利用しています。

木質ペレットイメージ

バイオマスの熱利用で持続可能なまちづくり

全国的にはバイオマスといえば発電が主流です。一方で、森林資源を利用したバイオマスの熱を利用して、持続可能なまちづくりを進めている地域があります。北海道北部の内陸に位置する下川町です。

下川町の人口は約3400人。高齢化率は40%を超えています。町の面積の88%が森林で覆われていて、林業と農業が主要な産業です。下川町では循環型森林経営と伐採後の木材を無駄なく使う加工システムによって、森林総合産業を発展させてきました。加工の過程で出た未利用材がバイオマスボイラーの燃料になり、バイオマスでできた熱を町内の公共施設などに供給。化石燃料からの転換により節約できた燃料代を保育料軽減などの子育て支援策に活用しています。

このバイオマスによって進めている高齢化社会のモデル地区づくりが、「一の橋地区バイオビレッジ構想」です。一の橋地区は昭和35年には2000人以上が暮らしていましたが、人口はわずか約140人にまで激減。高齢化率は50%を超え、商店や病院もなく、買い物や除雪の支援が必要となるなど、コミュニティを維持できるかどうかが課題になっていました。

そこで下川町では一の橋地区の自立的・安定的な暮らしを実現しようと、地域住民と議論を重ねます。2010年度から地域おこし協力隊を導入し、生活支援サービスをはじめると、2013年には老朽化した町営住宅を建て替えて、エネルギー自給型の集住化住宅を作りました。

集住化住宅は長屋のように廊下でつながった22戸の住宅で、1LDKから3LDKまでの間取りがあり、若者から高齢者まで様々な家族構成に対応しています。この住宅の給湯や暖房はすべてバイオマスボイラーから供給されているほか、電力の一部は太陽光発電によって賄われています。

バイオマスボイラーによる熱は、併設されている住民センターや郵便局、さらには近隣の障害者施設や、シイタケの菌床栽培を行う施設にも供給され、新たな雇用も生み出しました。

下川町は脱炭素社会や持続可能なまちづくりを目指す取り組みが注目され、木工作家や起業希望者などの移住者が年々増加し、12年には初めて転入者が転出者を上回ります。17年にはSDGsに沿った独自のビジョン「2030年における下川町のありたい姿」を策定。17年の第1回ジャパンSDGsアワードで内閣総理大臣賞を受賞するなど、全国でも先進的な取り組みとなっています。

農山漁村の持続的発展や活性化に期待

バイオマス施設は資源が広い地域に分散していることから、収集や運搬、管理などにコストがかかるという課題があります。そのため小規模分散型の設備になりがちです。しかし、この課題を逆手にとれば、下川町の一の橋地区のように小規模なコミュニティのエネルギー自給には向いているといえます。

バイオマス資源活用イメージ

林地に放置される残材以外にも、稲わらや家畜排泄物、生ゴミなど、農山漁村で捨てられているものの多くがバイオマスの資源になります。農山漁村でバイオマス資源を活用できれば、燃料の確保と発電を地域の中で完結することも可能です。

バイオマスは確かにコストがかかりますが、バイオマス発電を事業者が導入する場合には経済産業省や農林水産省、環境省などがさまざまな補助金を用意しています。また下川町のように、行政や地場産業と地域住民が一体となって取り組むことで、町外からも人を呼び込むことができます。

森林資源は国内各地にあります。過疎化が進む中、地域の森林資源を活用しながらエネルギーを自給し、地域活性化も期待できるバイオマスは、農山漁村のこれからのまちづくりに有効な手段の一つではないでしょうか。

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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