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国内・海外市場動向
中小企業が途上国で展開できるSDGsビジネスとは

中小企業のためのSDGsビジネス入門 ③

SDGs(Sustainable Development Goals)は、
持続可能な社会を実現するために2015年に国連で採択された、
2016年から2030年までの世界共通の国際目標です。
世界が直面する飢餓や人権侵害、経済格差、気候変動に伴う自然災害などの問題を解決し、
持続可能な世界を目指すための17の目標が設定されています。

SDGsの目標を達成するためには、先進国、新興国、途上国のあらゆる国と、
官だけでなく企業、非営利組織、個人などが垣根を越えて協力することが求められています。
しかし、日本の中小企業はSDGsを知っていても、実際に取り組んでいる企業はごくわずかとみられています。

この連載では、中小企業が自社のビジネスでSDGsに取り組む意義やヒントについて考えてきました。
最終回は、途上国のニーズと中小企業とのマッチングを支援する、
独立行政法人国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」について見ていきます。

市場拡大が見込まれる途上国・新興国

持続的な開発目標のSDGsには17の目標があります。しかし、多くの中小企業にとっては、どの目標に自社が取り組むことができるのか、よく分からないという現実があります。

この連載の1回目でも紹介した、一般財団法人日本立地センターと経済産業省関東経済産業局が、中小企業500社を対象に実施した2020年度の「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」の結果を見ると、その戸惑いが如実に現れています。

SDGsについて「すでに対応・アクションを行っている」企業は17社で、全体のわずか3.4%。「対応・アクションを検討している」企業は24社で4.8%と、両者をあわせても41社、8.2%にとどまります。しかも、実際に進めている内容は「SDGsについて理解するための情報収集・勉強等を行う」「対応を自社の経営計画・事業計画に反映する」と言ったものが多く、多くの企業が取り組みの初期段階にあることが推察されます。

一方、調査では、SDGsにまったく取り組んでいない残りの459社に、17の目標のうち自社が主体的に貢献できるものについて、複数回答可で聞いています。

最も多かった回答は「いずれも自社が貢献(あるいは行動)することは難しい」の54.9%。半数以上の企業が具体的な目標を挙げることができていません。

図表:2020年度 中小企業のSDGs認知度・実態等調査 概要版
2021年7月一般社団法人日本立地センターより引用

多くの企業が「貢献できる」と答えたのは、目標8の「働きがいも経済成長も」の20.0%。次いで目標3の「全ての人に健康と福祉を」の10.9%でした。しかし、それ以外の回答は全て10%未満で、最も低かったのは目標2の「飢餓をゼロに」の3.3%。「気候変動に具体的な対策を」と「陸の豊かさも守ろう」も3.9%と低い数字でした。

自社の事業活動や社会的活動に近いものは貢献しやすいと考えているものの、日頃なじみのない目標については回答率が低い傾向にあります。

しかし、飢餓や気候変動、環境問題も、企業活動やビジネスとして関わる余地があるのではないでしょうか。これらの問題の解決が求められているのが、途上国や新興国です。

途上国と新興国は、今後も世界の人口が増えていく中で、人口増を牽引する国々です。世界の国内総生産に占める割合も年々増加していて、2017年には42%にまで伸びました。今後も消費地としての市場拡大が想定されるほか、資源や食料の生産地として魅力的な市場でもあります。先進国の企業が、途上国と新興国への進出や投資を年々増やしているのが世界の流れです。

JICAが進める中小企業のSDGsビジネス支援

途上国への進出や投資を日本からも進めようと、企業の支援に乗り出しているのが、独立行政法人国際協力機構(JICA)です。JICAは日本の優れた人材や技術、資金などを活用して、途上国の貧困削減などの解決に取り組む政府開発援助(ODA)などを実施しています。青年海外協力隊を派遣しているのもJICAです。世界に100か所の拠点を持ち、途上国との人的なネットワークと信頼関係、それに外部専門家による途上国の情報を有しています。

中小企業と途上国のマッチングを支援する事業は2012年度にスタートし、国連でのSDGsの採択を受けて、2018年より「中小企業・SDGsビジネス支援事業」をスタートさせました。海外展開を考えている日本の中小企業の製品や技術と、途上国が抱えている開発課題やニーズをマッチングするという事業で、JICAが間に入ることで、企業と途上国がWIN-WINの関係を構築できる事業の展開を目指します。

図表:中小企業・SDGsビジネス支援事業 独立行政法人国際協力機構民間連携事業部 2021年8月更新より引用
図内リンク先:国別開発協力方針

この事業では、大企業を対象とした「SDGsビジネス支援型」と、中小企業を対象にした「中小企業支援型」があります。中小企業に対しては、支援のレベルを3段階に分けて事業委託を行っています。

第1段階は「基礎調査」です。SDGsビジネスを展開するために、現地で行う基礎的な情報収集を支援します。期間は数か月から1年程度で、委託金額は850万円、または980万円です。対象は中小企業と、中小企業団体の一部組合に限ります。

第2段階は、ビジネモデルを策定するための「案件化調査」です。自社の技術や製品、ノウハウを、途上国の課題解決にどのように貢献できるのかを検討し、ビジネスモデルの素案を策定するもので、こちらも期間は数か月から1年程度です。委託金額は3,000万円、または5,000万円で、第2段階以降は中小企業と中堅企業、中小企業団体の一部組合が対象になります。

第3段階は、ビジネス活動計画を実証・策定する「普及・実証・ビジネス化事業」です。技術や製品とともに、ビジネスモデルを検証し、実際の普及活動を通じて事業計画案を策定します。期間は1年から3年程度で、委託金額は1億円、1.5億円、2億円のいずれかになります。

図表:同上

また大企業に対しては「案件化調査」で850万円、「普及・実証・ビジネス化事業」で5,000万円の事業委託を実施しています。2020年度は2回の募集で中小企業92件、大企業24件のあわせて116件が採択されました。採択された中小企業や大企業は、途上国の課題解決に貢献できるビジネスの事業化を目指すとともに、ODA事業での活用の可能性も検討します。

途上国の開発課題は多岐にわたる

では、実際にはどのような分野に途上国のニーズがあるのでしょうか。JICAでは分野別、国別に、発展途上国の抱えるニーズの詳細な状況を提供しています。

環境やエネルギーに関する分野で代表的なのは、インフラに関わる技術です。風力、太陽光、バイオマス、小水力発電といった再生可能エネルギー発電の整備は、多くの途上国の課題解決につながります。

また、バイオトイレや小規模無煙焼却炉、医療廃棄物や廃プラスチックの処理など、環境問題を解決する技術は日本の中小企業が得意とする分野ではないでしょうか。水の浄化や汚水処理なども、途上国のニーズは高くなっています。

農業の分野では、設備や機械だけでなく、様々なノウハウを提供することによる貢献も可能です。ICTやロボット技術を活用したスマート農業による生産性の向上、物流のノウハウ、トレーサビリティの向上、加工に対応した農産品の栽培など、生産性の低い農業を行なっている途上国では多様なニーズがあります。

産業育成では観光名所の入場料一括徴収システムや、観光案内プロモーションのデジタル化といったニーズも存在します。その他にも職業訓練や教育、保健・医療、福祉機器、防災など、あらゆる分野にニーズは広がっています。

全く経験がない分野に取り組むのではなく、自社が持つ技術やノウハウで対応できるニーズがあれば、参入を検討するのも一つの方法です。その際に、SDGsで必要なのは取り組みの体系化です。企業理念に沿った将来像を描いて、そのための方法やSDGsビジネスを経営計画の中に位置づけます。そして解決に取り組み、その実績を「見える化」します。

時間はかかりますが、特定の分野や業界でいち早くSDGsの取り組みを体系化できれば、大きな企業価値を生み、先行者利益を得ることが可能になります。SDGsの取り組みは一朝一夕でできるものではないからこそ、早く取り掛かり、じっくりと体系化していくことが必要ではないでしょうか。

SDGsのポイントはパートナーシップ

SDGsの目標の中には、自らの企業努力だけで実現できるものもあります。中小企業の多くが、SDGsを自社の事業活動や社会的活動の範囲で実施するものだと想定しているのは、先述の調査結果でも触れた通りです。

しかし、SDGsの目標の多くは、先進国が途上国を支援する、もしくは先進国と途上国が一緒に取り組むことで実現が可能になる、難しい課題でもあります。だからこそ、SDGsを進める上で重要なのはパートナーシップです。

SDGsの17の目標のうち、最後の17番目は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。パートナーシップを密に結んで、現実を動かしていこうと呼びかけています。

JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業」で見てきたように、途上国への技術支援や投資は、最も重要なパートナーシップの一つと言えます。途上国が抱える課題に対する支援は、途上国のためだけではなく、先進国を含めた世界全体が持続可能で平和であり続けるためにも必要なことです。

また、パートナーシップを結ぶことができるのは、国同士だけではありません。企業や個人単位で、様々な地域の人と、様々な立場で関係を保つことが可能です。JICAのSDGsビジネス支援事業は年に2回募集が行われています。SDGsについて知り、自社でできることを棚卸しした上で、途上国とのパートナーシップも取り組みの選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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