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国内・海外市場動向
東南アジアの中小企業が取り組む脱炭素・SDGsビジネスの現状(2)

SDGsに対する中小企業の意識と消費動向の変化

東南アジアは経済成長を続けていて、消費財の市場も拡大しています。
持続可能な開発目標のSDGs達成度ランキングの上位に東南アジアの国々は入っていないものの、
国によっては脱炭素やSDGsに対する意識は高まっていて、若い世代を中心に消費行動にも変化が起きつつあります。
今回は、東南アジアの中小企業のSDGsをめぐる状況と、消費財の市場の変化についてお伝えします。

SDGs達成度ランキングのASEAN最高はタイの43位

持続可能な開発目標のSDGsに積極的に取り組んでいるのは、一般的にはヨーロッパを中心とした先進国と言われています。国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年発表しているSDGs達成度ランキングでは、2023年は1位から20位までがヨーロッパの国々で、日本は21位でした。

一方で、現在のランキングの順位は低いけれども、SDGsの目標達成に向けては大きな役割を果たすと期待されている地域があります。それが、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国をはじめとする、東南アジアの国々です。2023年のランキングで、ASEANで最も高い順位だったのはタイの43位。続いて、ベトナムが55位、シンガポールが64位、インドネシアが75位となっていて、最も低かったのはミャンマーの126位でした。

タイで最も評価が高いのは、SDGsの17の目標のうち、目標1の「貧困をなくそう」と目標4の「質の高い教育をみんなに」。この2つの目標については、ASEAN加盟国のうち、人口が少ないブルネイを除いた9か国の平均スコアが、世界平均を上回っています。また、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」についても、達成に向けて順調に進んでいると評価されています。

ASEAN加盟国の2023年現在の人口は、最も多いインドネシアが約2億7700万人、2番目のフィリピンが約1億1700万人となっています。そして3番目のベトナムも1億人を突破しました。今後も人口の増加や経済発展が見込まれることから、SDGsを踏まえた経済活動をすることによって、気候変動対策が進むとともに、ビジネスチャンスも生まれると考えられています。

国によっては中小企業の気候変動問題への意識は高い

東南アジアの経済成長の担い手としては、大企業だけでなく中小企業の役割も重要です。東南アジア全体で7000万社を超え、企業全体の約97%を占めているとされる中小企業の取り組みがなければ、SDGsの目標達成は果たせなくなります。ただ、製造業や運輸業に比べると、サービス業における二酸化炭素排出量の測定は難しく、実態がはっきりしていないのが現状です。

では、東南アジアの中小企業の経営者は、脱炭素やSDGsについてどのように考えているのでしょうか。経済学者のMichael T. Schaperは、2022年に発表した『SME RESPONSES TO CLIMATE CHANGE IN SOUTHEAST ASIA(東南アジアにおける気候変動への中小企業の対応)』の中で、ASEANの中で経済規模が大きいインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナムの中小企業の経営者800人に対し、オンラインによる意識調査を実施しています。回答した業種の割合は多い順にサービス業、製造業、商社でした。

気候変動問題への対応として、現在どのような活動をしているのかについてを聞くと、ほとんどの企業が何らかの活動を行っていると回答。「何も行っていない」と答えたのは7%弱でした。活動の内容では、エネルギ―消費の少ない照明の設置、エアコンの使用削減、リサイクル、それに未使用時の電気機器の電源を切るといった回答が多く寄せられました。

また、異常気象に対処するため、今後2年間にどのような行動を取る予定なのかを聞くと、温室効果ガスの排出量削減と答えた割合が、フィリピンとマレーシアで52%を超えたほか、インドネシアが約48%、シンガポールが約42%、ベトナムが約33%でした。5か国の平均は45%強で、国によって濃淡はあるものの、中小企業の経営者の気候変動対策やSDGsに対する意識は比較的高いと言えます。

若い世代に芽生えている消費行動とは

一方、消費者の側にも変化が現れています。東南アジアの消費財は、どちらかといえば価格の安さが重視されてきました。その傾向は残るものの、同時にサステナブルな消費への関心が、欧米にも劣らないレベルで広がっていることが様々な調査から明らかになっています。

そのうち、ASEAN地域の生活者のトレンドなどについて調査研究を行っている博報堂生活総合研究所アセアンは、ASEAN地域の40代以下の若い世代を中心に「コンシャス」というライフスタイルが広がっていると指摘しています。「コンシャス」とは、自分の行動が社会にもたらす影響を意識するライフスタイルのことです。このライフスタイルを支持する人々は、社会に良い影響を与えるブランドや商品を選び、社会の課題に対してもアクションを起こすとされています。

同じく環境や社会課題を意識した消費行動に「エシカル」があります。「エシカル」が困っている人や地球のためといったイメージで行動するのに対し、「コンシャス」は環境問題や社会課題を「自分ごと」として捉えて行動する点に違いがあります。

もちろん、「エシカル」も「コンシャス」もSDGsにつながる考え方です。東南アジアの国々でこれから消費財のビジネスを検討する場合は、ヨーロッパと同様にSDGsを踏まえた商品やサービスが必要になると言えそうです。

東南アジアの消費財のマーケットはまだまだ伸びる

東南アジア各国では前述の通り、今後も人口の増加が続き、経済発展も見込まれます。消費財のマーケットも拡大していて、そこにSDGsを支持する考え方が広がりつつあります。ただ、消費財を扱う現地の中小企業にも、「コンシャス」や「エシカル」に配慮した商品を開発するところが出てきてはいるものの、本格的に普及するかどうかはまだまだこれからではないでしょうか。

一方で、欧米や中国、日本と同様に、東南アジアでもインターネットによる電子商取引(EC)が拡大しています。日本政策金融公庫が2022年11月に発表した『各国における越境ECの状況』によりますと、2021年時点で東南アジア地域のインターネット利用者は約4.4億人で、少なくとも1度はオンラインでの買い物を経験した人は全体の80%にのぼります。

さらに、東南アジアのEC市場は今後も高い成長が見込まれていて、2025年度には2021年度の2倍程度の市場規模になることが予測されています。日本の中小企業が東南アジアにビジネスを展開する場合、ECによる参入は重要な手段の一つと言えるでしょう。

また、東南アジアの中小企業との連携を図ってビジネスを展開する場合には、現地のサステナブルな製品の輸入や、現地が抱える問題を解決する製品やサービスの展開、それにITを活用した現地の課題を解決するビジネスと、それに伴う雇用の創出なども、選択肢として挙げることができます。

ASEAN加盟国はSDGsの目標達成やカーボンニュートラルを実現するために、今後国内の中小企業の脱炭素経営などを支援する政策を打ち出すことが予想されます。地理的にも欧米よりも近い東南アジアは、日本の中小企業にとっても可能性が広がるマーケットです。消費財のSDGsビジネスを検討する際には、東南アジアの動向に注目してはいかがでしょうか。

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