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国内・海外市場動向
海外ビジネスの現状と課題を専門商社に聞く(前編)

渡辺ケミカルが取り組む中国ビジネスの現状
~仕向け地変更のヒント~

海外ビジネスに取り組む企業にとって、緊迫する世界情勢や、近年の国際情勢・各国間の関係性の変化
への対応は大きな課題となっている。
ただ、日本国内の市場が少子高齢化などで縮小していく中では、海外市場の重要度はこれからも増していくのではないだろうか。
現状の課題に対応しながら、将来を見据えて新たな市場の開拓に取り組んでいるのが、医薬・食品・化成品の原料の輸出入を手がける商社の渡辺ケミカル株式会社。輸出入の主要なパートナーは中国で、東南アジアやインドへの進出を図っている。

このシリーズでは、
渡辺ケミカルで樹脂や塗料など化成品原料の輸出を担当する化成品事業部の井戸真司事業部長兼国際部長と、
輸入を担当する渡邊真也新規開発部長に、海外ビジネスの取り組みを聞く。
前編では、2026年3月時点での中国ビジネスの現状を語ってもらった。

中国を中心に化成品原料の輸出入を手がける

渡辺ケミカルは医薬品の原料や食品添加物、化学工業製品の輸出入を手がける商社。大手製薬メーカーで役員をしていた渡邉宗一郎現社長の曽祖父が、1949年に創業し、現在では国内外に数多くの取引先を持つ。2025年9月期の年商は284.6億円で、医薬食品事業部と化成品事業部を主な柱として事業を展開している。

輸出入の主な相手国は、中国をはじめとするアジアが中心だ。本社は大阪市で、東京・名古屋・シンガポールに支店を置くほか、中国の上海・広州・天津と、マレーシアにも拠点がある。柱となっている事業のうち、化学工業製品の原料を扱う化成品事業部は、長年輸出に取り組んできた。その一方で、2024年2月に新たに新規開発部を立ち上げるなど、輸入も本格化している。

 化成品事業部では、主にどのような製品を輸出しているのでしょうか?
 井戸部長:
インキや塗料などの原料や、コーティングに使われる樹脂や添加剤、また近年は半導体の製造プロセスに使われる副資材などを輸出しています。化成品事業部は、当社の部署の中でも最も早く輸出に取り組み始めました。現在は海外に進出している日系企業への輸出も一部あるものの、どちらかといえば海外のローカル企業に直接輸出販売をしています。

 主な輸出先と割合などはどうなっていますか?
 井戸部長:
輸出先は中国、韓国、台湾と東南アジアの国々です。その中でも中国が圧倒的に高い割合を占めています。

 化成品の輸入を担当する新規開発部は、どのような経緯で立ち上げたのでしょうか?
 渡邊部長:
以前からお客様の要望があれば、輸入にも個別に対応してきました。そこから組織として取り組もうと、部署を立ち上げたのが2024年2月です。中国にある3拠点を生かして、現在輸出している原料の仕入れ先企業に、さらに上流の工程のいわゆる川上の素材を輸入して販売しています。
部署を立ち上げたのは、中国の原料メーカーのレベルが上がってきたことが背景にあります。井戸は7年、私は6年中国に駐在する中で、中国製のレベルの向上を肌で感じてきました。中国で仕入れて日本で売ることも、ビジネスとしては必要だと考えたのが立ち上げた理由です。

 井戸部長:経営的な視点で言えば、輸出と輸入のどちらかに偏ると、その時の為替リスクに対してリスクヘッジができません。価格競争は必ずありますので、為替の状況によって日本製が安い時があれば、中国製が安い時もあります。輸出も輸入も両輪でやらなければいけないと考えたのも理由の一つです。

化学業界の「ジャパンリスク」と存在感を増す中国

 日本国内の経済安全保障に関する法律や、中国政府の対日輸出規制などについては、どのような影響を受けていますか?
 井戸部長:
中国の景況感は確実に悪くなっています。一方で、円安でもあるので、輸出に関しては今のところ数字の上では必要な水準を維持できています。ただ、1年後はどうなるかわかりません。正直なところ、今までずっと右肩上がりで好調だった中国での業績が、ここにきて少し踊り場に差し掛かっていると感じています。

 渡邊部長:それでもアジアの他の国に比べれば、中国がビジネスをしやすい環境にあることは確かです。私は駐在する前は、中国に対してネガティブな印象を持っていました。コロナ禍も重なるなど大変な時期だったのですが、実際に駐在してみると、その印象は変化しました。
中国人の方々は人情味があり親切で、こちらが誠意をもって対応し信頼を得られたら、とても深い付き合いができます。海外ビジネスを展開する上では、現場に足を運び、商習慣や文化を理解することが重要だと感じています。

 中国からの輸入に関しては、これからもニーズが高まっていくのでしょうか?
 渡邊部長:
日本の化学業界では「ジャパンリスク」という言葉を聞くようになりました。国内の化学工場の多くは築年数が40年から50年経っていて、老朽化しています。老朽化した工場を改修工事や建て替えによって操業を続けるかというと、かつてのようには利益が出なくなっているので、製品の製造をやめるケースがすごく増えています。
また、化学業界の原料も毎年のように値上げしています。できれば日本のものにこだわりたいけれども、仕入れ先を早く切り替える必要に迫られています。そのため、とにかく使えるものなら安ければいいという動きになっているのが現状です。昔のように中国製は嫌だという雰囲気はありません。背に腹は変えられないので、安い中国製が求められるようになりました。それだけ中国の存在感が大きくなっています。

 化学原料の供給構造が変化している背景には、製品レベルの向上以外にも要因があるのでしょうか?
 渡邊部長:
調べてみると、レアアースに限らず、ほぼ中国しか作っていないものがたくさんあります。当社が扱っているビタミンCは、もともと産業用に量産化したのは日本の大手製薬メーカーです。それが、現在は日本では作られなくなり、中国のシェアが90%を超えています。
化学原料についても、元をたどるとほとんどが中国に行き着きます。中国企業は川上の原料だけを作っていたのが、今では川下の製品まで作るようになりました。日本製は付加価値があることが強みでしたが、中国製の台頭で稼げなくなりつつあります。輸入品の需要は、ますます増えていくのではないでしょうか。

中国一辺倒から東南アジア、インドへ

 中国を中心に据えた輸出入のビジネスには、現状ではどのような課題がありますか?
 渡邊部長:
中国で対応が難しいのは、2021年3月に施行された「中華人民共和国長江保護法(以下、長江保護法)」です。長江流域の企業に対して、環境に関するコンプライアンスの改善をはじめ様々な禁止事項が定められました。化学物質に対しても厳格な管理が求められています。
この法律は海に面した港にも適用されているため、港での物資の受け入れにも厳しいチェックがあります。しかも、管理の方法が国で統一されているのではなく、省ごとに異なっています。当社は上海と広州、天津に拠点があり、翻弄されながらも対応しているのが現状です。

 井戸部長:これまでは化成品の輸入と輸出は中国に依存してきました。しかし、地政学的リスクや政治的な観点からも、中国一辺倒ではなかなか厳しいと感じています。そこで、2017年にシンガポールに支店を開設したほか、2022年にはマレーシアにも拠点を立ち上げました。
今まで東アジア中心でビジネスをしてきたのを、東南アジアや南アジアを攻める必要があり、インドも含めた調査をずっと続けています。トライアンドエラーを繰り返しながら、新たな市場の開拓を進めている状況です。

 後編は新たな海外市場開拓の取り組みと、今後の展望について伺っています。

 渡辺ケミカル株式会社

 こんな会社です
医薬品・食品・化学工業薬品など幅広い分野に対応する原料商社です。1949年の創業以来、医薬品原料、食品原料、化学工業薬品、動物薬・飼料添加物、化粧品原料など多様な原料を取り扱い、国内外の製剤メーカーへ供給しています。中国・東南アジアの現地法人とのネットワークを活用した輸出入事業を展開し、現地工場の視察・監査も自社で実施。日本国内では欧州大手化学メーカーのディストリビューターとして在庫・品質管理体制を整えています。医薬品原料の認証取得や新薬開発段階からの連携など、技術力と情報提供力を備え、国内外の市場ニーズに応じた原料供給を行っています。

 取り扱い概要
医薬品原料、医薬品中間体、ビタミン類、食品原料、化学工業薬品、動物薬・飼料添加物、化粧品原料の供給。中国・東南アジアなどとの輸出入事業、在庫・品質管理を含むディストリビューター業務。

 強み
・医薬品・食品・化学工業薬品など多分野に対応
・中国・東南アジア現地法人との海外ネットワーク
・現地工場の視察・監査を自社で実施
・欧州大手化学メーカーのディストリビューターとして在庫・品質管理体制を保有
・医薬品原料の認証取得・新薬開発段階からの連携実績

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