中小企業もエシカルによるビジネスチャンスがある
エシカルな製品やサービスを生み出すことができるのは、大企業だけだと思われている人もいるかもしれません。実際に、日本国内のエシカルの取り組みを見ると、大企業だけでなく中小企業にも大いに関係があることが分かります。
地元で生産された食品や、伝統的な技法で作られている工芸品などを購入することもエシカル消費の一つです。
また、地域の事業者が生産した商品を、ふるさと納税によって購入することや、社会の課題解決に取り組む企業や団体をクラウドファンディングで支援することも、エシカル消費の一種と言えます。中小企業は、エシカル消費を担う中心的なプレイヤーになる可能性を秘めています。
ただ、これからエシカルな取り組みをしたいと考えていても、どのように進めればいいのかがわからない企業も多いのではないでしょうか。
中小企業がエシカルに取り組む方法
中小企業がエシカルに取り組み、新たな製品やサービスを生み出すためには、次のようなステップが考えられます。
まず、自社の事業を棚卸ししたうえで、自ら持っているエシカルな要素を整理し、可視化することです。脱炭素、省エネルギー、リサイクルに強みを持つ企業は、環境に配慮した新たな製品を生み出せる可能性があります。できるだけ多くの人が利用できることを目指したユニバーサルデザインに強みをもった企業は、社会に配慮した製品やサービスをもっと開発できるかもしれません。
また、地産地消に取り組む企業や、地域の伝統的な産業を守っている企業は、エシカルに取り組んでいることを明確にして付加価値をつけることで、新たな市場の開拓につなげることができます。
エシカルに取り組む際には、どれだけ消費者を巻き込むことができるのかも、重要になってきます。
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エシカルやSDGsに取り組む中小企業の事例
日本でもエシカルやSDGsのに取り組んでいる中小企業が各地にあります。
1919年に創業した株式会社セイバンは、「天使のはねランドセル」で知られている、兵庫県のたつの市の老舗ランドセルメーカーです。2020年1月にSDGsに取り組み始めて、最初に自社の事業がSDGsのどのゴールに該当するのかをマッピングしました。
マッピングの結果、環境や人体に悪影響のある物質や部品を排除した商品作りや、購入後6年間の修理保証、それに子どもの安全や地球環境への配慮が「つくる責任 つかう責任」に該当することが分かりました。
これらのエシカルな取り組みを、SDGsの他の目標に合致する取り組みとともに社外へPRすることで、社会課題に取り組む企業として若者世代からの支持を得ています。
大阪府富田林市の和菓子製造販売メーカーの株式会社富田屋は、和菓子を製造する過程で発生していた食品廃棄物の多さに悩んでいました。毎月22トンに及ぶ食品廃棄物を何とか削減したいと考えて、専門家のアドバイスを受けることができる中小機構の「ハンズオン支援事業」を活用して、食品廃棄物の排出削減を目指しました。
ここでも重要だったのは可視化でした。食品廃棄物の排出量をグラフによって見える化して、排出状況を把握し、原因を解析。余った和菓子を地域住民や社員に安価で販売するなどの廃棄ロスにも取り組むことで、排出量削減とともに経営改善も実現しました。
中小機構では、SDGsに取り組む企業の成功事例を紹介しています。エシカルにつながる事例もありますので、参考にしてみてください。
エシカルで海外展開を目指す
今後海外展開を目指す際にも、エシカルの取り組みは重要になってきます。欧州連合(EU)でエシカルやSDGsをめぐる法整備が進み、企業への規制が次々と打ち出されていることは、こちらの記事でお伝えしました(ヨーロッパの中小企業が取り組む脱炭素・SDGsビジネスの現状は(1)とヨーロッパの中小企業が取り組む脱炭素・SDGsビジネスの現状は(2))。
企業がエシカルに取り組む場合、ぜひ検討してもらいたいのが、第三者機関からの認証を受けることです。日本国内にもエコマークや森林認証のFSCなどの認証マークが使われているほか、ヨーロッパでは様々な認証を受けた製品が流通していて、認証を取得し、アピールすることが、ビジネスの優位性につながります。
これから海外展開を目指す場合には、進出を考えている国の状況や、その国が抱えている課題を知り、エシカルやSDGsの観点で製品などを開発することが、新たなビジネスチャンスをつかむ鍵といえそうです。
中小機構では、2025年に開催される大阪・関西万博に合わせて、エシカルな製品やサービスのマッチング支援も実施します。ジェグテックでも海外輸出案件を集約したサイト「海外マッチングスクエア」を用意して、中小企業や小規模事業者の海外展開を強力に支援しています。
エシカル消費は世界で急拡大していて、日本ではまだ規模は小さいものの、いずれは市場で重要な位置を占めてくることが予想されます。自社の事業や新規で開発したい事業にエシカルの要素がある場合、海外展開も視野に入れながら、新たな取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。