J-GoodTech ジェグテック

国内・海外市場動向
ジェグテックとの連携で航空宇宙産業の競争力強化を図る
経済産業省関東経済産業局の航空宇宙産業ビジネスマッチング

経済産業省関東経済産業局では、管轄する1都10県を中心に、
航空宇宙産業の国際競争力強化を図っています。
その一環として、ジェグテックと連携して実施している事業が「航空宇宙産業ビジネスマッチング」です。

2020年はコロナ禍での開催にもかかわらず、
オンラインの利点が活きたこともあり、中小サプライヤーの参加は過去最多となりました。
個別の面談も、実際の面会とオンラインの両方を取り入れることで、
コロナ禍でも全国のサプライヤーが参加しやすい状況をつくっています。

関東経済産業局は、航空宇宙以外の分野でもジェグテックとの連携を進めています。
公的なビジネスマッチング事業にジェグテックをどのように活用しているのかを、
関東経済産業局航空宇宙・自動車産業室の担当者に伺いました。

航空機産業は2024年以降に回復する

関東経済産業局は、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県の1都10県を管轄する、経済産業省の地方ブロック機関の一つです。管内では東京、栃木、新潟、長野を中心に航空機関係の大手企業が立地していて、中小企業が連携して受注を図る、航空機産業クラスターを形成する動きが活発化しています。こうした動きと連動しながら、自治体と連携してサプライヤーの支援に取り組んでいます。

「各地方の経済産業局は、各地域の実情に応じた形で自治体と一緒に産業振興に取り組んでいます。関東経済産業局管内では、航空機産業の大手重工メーカーや装備品メーカーが立地している地域があるほか、それ以外の地域でも航空機産業に力を入れる中小企業が集積しており、私たちも様々な施策を展開しています」

関東経済産業局では独自の支援策として、2014年から「航空宇宙産業ビジネスマッチング」を実施しています。2019年からはより多くの企業の新規参入を図ろうと、ジェグテックの活用を始めました。

2021年度 航空宇宙産業ビジネスマッチング スキーム図

「特に力を入れているのが、航空機産業への新規参入と既存の取引の拡大です。その取り組みの最たるものが、中小機構のジェグテックと連携して実施している航空宇宙産業ビジネスマッチングです。以前は私たちが事務局となり事業を実施していましたが、高い技術力やコスト競争力を持ったサプライヤーの新規参入を全国から図ろうと、ジェグテックの活用を始めました」

しかし、2020年に入って航空業界は状況が一変します。新型コロナウイルスの影響で旅客需要が低迷。海外では格安航空会社のLCCだけでなく、大手エアラインも倒産の危機に直面し、航空機メーカーは当面の減産を発表しました。その中でも関東経済産業局は、引き続き航空宇宙産業ビジネスマッチングを開催しています。

なぜならば、低迷する旅客需要も2024年にはコロナ前の水準に回復すると考えられており、航空宇宙産業自体が今後も成長産業であることに変わりはないとして、業界への支援を引き続き重要視しているからです。

そしてコロナ禍を乗り越え、旅客需要が回復する頃には、空飛ぶクルマや、新たな燃料を利用した航空機など、多くの技術開発等が進む可能性が広がっていることも業界全体の大きなビジネスの種として捉えています。また、世界的に成長が著しく民間の参入も多くなっている宇宙産業も、今後需要が拡大する分野です。こういったいくつもの要因から、国際競争力強化や技術革新等に応えていくために、様々な分野から新規参入を図ることができるビジネスマッチングは、今こそ必要だと考えています」

サプライヤーの参加がコロナ禍で急増

航空宇宙産業ビジネスマッチングは、以下のような流れでマッチングを進めています。

(1) ジェグテックでのニーズ情報公開
航空機産業に関わる国内の重工メーカーや装備品メーカーがバイヤーとなって、ジェグテックにニーズを公開します。

(2)サプライヤーからの提案
ジェグテックに登録している全国の中小サプライヤーは、公開されたニーズに対し自社の技術力を活かした提案書を作成しジェグテックにて提案を行います。

(3)商談
バイヤーは寄せられた提案をもとに、商談するサプライヤーを選定します。

2019年はバイヤーとサプライヤーが東京の会場に一堂に会し、対面形式で商談会を実施。ところが2020年は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、一斉商談会を中止しバイヤーとサプライヤーによる個別商談の実施へと変更いたしました。

2020年で起きた大きな変化は、中小サプライヤーの参加が急増したことです。22件のニーズに対して、提案したサプライヤーは214社、提案件数は356件と、どちらも過去最多を記録。サプライヤーは前年の93社から倍以上に増加しました。この要因を関東経済産業局では次のように分析しています。

「新規参入を意図して参加した企業ももちろんありますが、214社のうち約7割は、既存の航空機産業に参入している企業でした。航空需要が低迷した上、なかなか従来のような営業ができない中で、航空機産業で新しい仕事を獲得したいと考える企業が多かったのではないでしょうか。参加した企業は、オンライン上で気軽に商談できることや、大手企業との接点をもつことができた点も、大きなメリットととらえたようです」

バイヤー企業のニーズは多様化

一方で、バイヤー企業にも変化が起きています。バイヤーは例年10社前後が参加していましたが、2020年は5社のみでした。参加者数の減少は、航空需要の低迷が影響した可能性があります。その一方で、22件のニーズは前年よりも6件多く、それ以外の年とも遜色ない規模でした。これは1社あたりのニーズが増えた結果で、背景にはニーズの多様化が指摘されています。

■ 2020年度ビジネスマッチングニーズ一覧(事例)

1.ナブテスコ株式会社 1-1:アクチュエータ電動化開発パートナー、量産外注パートナー
2.米国Farwest Aircraft, Inc. (代理人: 全日空商事株式会社 アビエーション事業部) 2-1:航空機整備用器材、治工具類の受託製造
3.多摩川精機株式会社 3₋1:防衛・宇宙用部品の5軸マシニング加工を得意とするサプライヤー
3-2:海外ライセンス部品や海外規格部品の見積・調達・問題対策を一貫して対応するサプライヤー
4.トヨタ紡織株式会社 4₋1:アルミ切削~表面処理までの一括対応可能な製造委託先
4-2:航空難燃材料に対応できる射出成形メーカー
4₋3:ワイヤーハーネスの部材調達~組立てまでの一貫対応メーカー
4-4:シート用 クッションを発泡~縫製~接着まで一貫して対応できるメーカー
4₋5:航空機 公知規格品を取り扱う商社、もしくは製造販売
4-6:航空機 シート用 副資材を扱う商社(締結部品、フェルト、粘着テープ、ファスナー等)
5.株式会社IHIエアロスペース 5-1:大型の縦旋盤・マシニング設備を有し、大型精密加工を専門とするサプライヤー
5-2:外径2000mm以上のアルミリングを鍛造できるサプライヤー
5-3:シリコンラバー材の押出成型技術を有するサプライヤー
5-4:輸入材を購入し、化学成分分析・超音波・放射線検査等の品質確認が実施できるサプライヤー
5-5:AMS規格のチタン/インコネル/SUS/アルミ材の在庫を有し短納期で供給可能なサプライヤー
5-6:宇宙環境で使用できるバルブ
5-7:特殊金属(ニオブ材)の製造加工メーカもしくは取り扱い商社
5-8:特殊金属(ニオブ材)のシリコンコーティング
5-9:L605極細配管を供給できるサプライヤー
5-10:ゴム素材の加工を専門とするサプライヤー
5-11:航空機用ケミカル品を取り扱う商社
5-12:ガラス・炭素繊維の織物に樹脂を含浸させる作業が出来るサプライヤー

「従来はチタンの切削加工や表面処理など、量産できる部品のニーズが多い傾向でした。それが最近では、装備品の電動化など、開発から一緒に取り組んでもらえる企業を探すケースが出てきています。2020年はさらに新しい傾向として、装備品などの調達もできる商社機能を持ったサプライヤーを募集するニーズもありました。バイヤー企業としても、一緒に開発ができる技術力を持った企業や、長期的に付き合える企業と出会えるように、数年後を見据えてニーズを出していると考えられます」

また、バイヤーの大手企業にとっては、多くのサプライヤーから提案を受けられることは大きなメリットと言えます。アンケートやヒアリングでは「一部工程のアウトソーシング化の推進や、廃業リスクがある取引先の代替候補先を探すために、全国規模でのサプライヤー開拓に役立った」という声や、「サプライヤーの提案が毎年多く、公的機関の主催のためサプライヤーのレベルが高い」といった感想も寄せられました。関東経済産業局ではマッチングを取引につなげていくためにも、長期的なフォローアップが必要だと考えています。

「マッチングの商談は、企業同士がやりとりを重ねながら、お互いの間合いを徐々に詰めていくことで続いていきますので、やはり時間はかかります。発注の規模やコスト面などでミスマッチを起こさないためにも、企業同士の対話を中長期的にフォローアップしていくことが重要です。アンケート以外にも、定期的なヒアリングなどを実施して、中小機構と連携しながらフォローを続けていきたいです」

様々なマッチングにジェグテックを活用

関東経済産業局と中小機構では、2021年もジェグテックを活用して航空宇宙産業ビジネスマッチングを開催します。6月頃にバイヤーの大手企業がニーズを提出し、7月から8月にかけてサプライヤーからの提案を募集。大手企業が商談する企業を選定して、10月頃に商談が行われる予定です。

関東経済産業局では、航空宇宙産業ビジネスマッチング以外でもジェグテックを活用しています。その一つが「オープンイノベーション・マッチングスクエア(OIMS)」。OIMSでは、中堅・中小企業・スタートアップの新事業創出に向けて、大手企業等の共同開発・事業連携ニーズを随時発信し、オープンイノベーションの促進を図るものです。OIMSを活用して、国土交通省関東地方整備局・ジェトロとも連携し、防災・減災・インフラ維持管理分野やグローバル展開に向けたマッチングも実施するなど、その機能を拡張しています。その他にも、自動車産業の関連でも大手企業、ベンチャー、自治体などの連携にジェグテックの活用を検討するなど、今後もジェグテックの機能を活かした産業振興を進めていく考えです。

「企業同士のマッチングの手段として、ジェグテックは非常に有効だと思っています。航空機関連のサプライヤーにとっては、航空宇宙産業ビジネスマッチングで航空機産業の需要を取り込むとともに、ジェグテックに触れることで、他の産業のニーズを知る機会にもなります。新しい仕事のヒントにもなり、無料で使えますので、ぜひ積極的に活用していただきたいです。関東経済産業局としても、航空機関連の大手企業の参加も引き続き拡大させていきたいと考えています。中小機構と相談しながら、マッチングの前後の仕掛けやフォローアップの仕組みなど、ジェグテックを使った新たな工夫も考えていきたいですね」

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公的な支援機関で最もジェグテックを活用していただいている機関のひとつが、関東経済産業局です。
関東経済産業局だけでなく、全国の経済産業局へジェグテックを横展開してご活用いただいております。
今後も全国の経済産業局と連携し、企業のマッチングに取り組んでいければと考えています。
2021年の航空宇宙産業ビジネスマッチングについても、参加企業にとって負担が少なく、
スムーズに運営できる方法を、関東経済産業局と一緒に検討しているところです。
多くの企業に航空宇宙産業ビジネスマッチングに参加いただいていることで、
ジェグテック全体の活用も活発になっています。

中小機構としても、今後もジェグテック会員企業の皆様に価値を提供できるように取り組んでいきます。

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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