スマートグラスとソフトウエアの両方を自社で企画・開発
「これが弊社のメガネ型ウエアラブルコンピュータ、いわゆるスマートグラスです。以前、Googleグラスが話題になったことを覚えている方もいらっしゃると思いますが、そういったBtoCの製品とは異なり、BtoB専用に開発している製品です」
そう言って、2021年春より販売開始となる新製品「InfoLinker3」を紹介してくれたのは、営業チームのリーダーおよび現場課題コンサルティングであり、また技術士(経営工学)という国家資格も持つ小矢英孝氏です。
ネックバンドとヘッドマウントからなる同社のスマートグラスには、文字や映像を映し出す極小のディスプレイ、カメラ、内蔵マイク、スピーカー、骨伝導イヤホンジャック等、様々なものが詰め込まれています。また、スマートグラスでは世界初となるLTEモジュールも搭載し、どんな場所でも快適な通信が行えるよう設計されています。
ハードウエアのみならず、連動する現場支援ソフトウエア「LinkerWorks」の両方を自社で企画・開発し、ワンストップで提供しているのが同社の最大の強み。社内にハードとソフトそれぞれの専門チームを置き、連携しながら同時に開発しています。
「BtoBのスマートグラスを作っているメーカーは海外を含めていくつかありますが、仕事の内容に合わせるために他社のアプリも併用しなければならないケースが多い。弊社はハードもソフトもセットで提供しているので、すぐに現場で使い始められますし、併せてフォローを行うことができます。こういった企業は世界でも他には例がないと思います」と、取締役 CPO ソフトウエア開発責任者の鬼頭和秀氏は自信を覗かせます。
遠隔地からの技術指導や自動記録で作業効率化に貢献
同社の製品が提供するソリューションには大きく「遠隔作業支援」と「作業ナビゲーション」の2つがあります。
「遠隔作業支援」では、まず現場の作業者がスマートグラスをかけ、離れたところにいる監督者にネットワークで接続します。監督者はPCに送られてくる映像を見ながら音声やテキストの送受信、PCの画面共有、映像へのマーキングなどで、指導やアドバイスなどをリアルタイムで行うことができます。
「作業ナビゲーション」では、あらかじめソフトウエア上で作業手順書を作成しておき、作業者はサーバから取得した手順書を見ながら指示に沿って作業を実行します。この場合も、監督者は作業の進捗状況を遠隔地からモニタリングすることが可能です。
「ベテラン作業員の技能を継承し、初心者にも実行できるように標準化することで、作業効率の大幅な改善、品質や生産性の向上に寄与してきた実績があります。また、工程を映像や写真でログに残すこともできますし、今まで手で書いていた作業レポートや報告書の自動作成が可能になるなど、事務的な部分でもDXに貢献できています」と小矢氏。
スマートグラスを身につける作業者とソフトウエアを操作する監督者の距離を問わないので、ウィズ/アフターコロナにおいての非接触での技術指導や、なかなか出かけることのできなくなった海外の現場とのやり取りなどにますます力を発揮することが期待されています。
「さらに今後は3つ目のソリューションとして、データを蓄積し、分析・活用する『作業アナライザー』を開発し、課題の継続的改善に貢献していきたいと考えています」と小矢氏。
作業マニュアルの製作会社から出発した歴史
同社がこのようにハードウエアとソフトウエアの両方を自社で企画・開発してきた背景には、ユニークな歴史の積み重ねがありました。
「弊社は1984年、もともとは作業マニュアルの制作会社として創業しました。しかし紙のマニュアルは重い、読むのが面倒、現場で手袋をつけていると触れないなどのデメリットがありましたので、アニメーションを使った直感的にわかりやすい動画マニュアルに進化させました」と小矢氏。
ただ、動画を見るためにPCのディスプレイを現場に持っていくわけにはいきません。「そこで、2001年からウエアラブルコンピュータのソフトウエア開発事業を開始。作業をしながらマニュアルを見ることができるようにしました」
しばらくは市販のウエアラブルコンピュータを現場作業用にカスタマイズして使っていましたが、2014年からは自社製ウエアラブルコンピュータの開発・販売に着手。2015年にはハンズフリーでの操作が可能な片眼式ヘッドマウントディスプレイを備えた小型コンピュータ端末「InfoLinker」を発表しました。
それから製造業、建設業、物流などへ利用の事例を増やしていきましたが、近年は従来の産業用途から医療分野へと広がりを見せ、新たな活用の場を見いだしています。
スマートグラスをもっと様々な業界で活用してほしい
「我々が最も大切にしているのは、お客様の仕事に対してどれだけのバリューを提供できるかということ。現在も、現場からの声を聞いて粘り強く改良を続けています。例えば、作業員の方はスマートグラスの操作がよくわからない、という場合に備え、PCの前にいる管理者側から遠隔操作できるようにしたのですが、これなどはまさにお客様からの要望をいただいて加えた機能です」と小矢氏。
他にも、「熱中症のアラートが出るようにしてほしい」「カメラをズームしてサイズのわかるスケールと共に撮影できるようにしたい」など様々な要望が寄せられており、それらひとつひとつについて開発チームで検討を続けているそうです。
お客様の声を聞き、さらに良い製品に改良していくためには、様々な業界で使われることが必要です。「スマートグラスには、開発者である我々自身にもまだわかっていない用途や活用できる業界がもっとあるはず」と鬼頭氏と小矢氏は口を揃えます。
「『InfoLinker3』にはLTEのSIMが入れられるようになっているのですが、5Gの時代になればもっと大きなデータの高速な行き来ができるようになる。そうなれば可能性がもっと広がるので、さらに新しい機能の開発に取り組んでいきたいですね」と鬼頭氏。
ネットワークに繋がりさえすれば、距離に関わらず現場の状況やデータを双方向でやり取りできるスマートグラスと専用ソフトウエア。これらを活用してDXを加速させることのできるシーンは、まだまだ無限大といえそうです。
FROM J-GoodTech
スマートグラスと専用ソフトウエア。操作はかなり難しいのでは…と思っていたところ、
スマートフォンのように、説明書を見なくてもできるだけ直感的に操作できるように作っているそうです。
さすが、もともとは複雑な作業工程のマニュアルを作っていた会社だけある! と膝を打ちました。
スマートグラスはメガネ型で音声コマンドによる操作も可能なので、
作業者はハンズフリーになり安全性の向上にも寄与しています。
発想次第で、様々な業界のDX化に力を貸してくれそうです。
今後もジェグテックでは、そのような技術力や卓越したサービスを有する中小企業に焦点をあて、
より多くの企業の目に触れるような活動を促進していきたいと考えております。