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[J-GoodTech特集記事]
未来が変わるビジネスマニュアル
中小企業最前線

第2回テーマ「ナノテク」
幅広い産業に活かせる新技術で、次の10年の競争力を強化する

「中小企業最前線」は、産業界で話題のキーワードをテーマとして取り上げ、
各テーマが中小企業に与える影響や考えられるビジネスチャンスなどを交えて説明する連載シリーズ。

第2回のテーマは、これからの「ものづくり」を変える技術として、業種を超えて注目を集める「ナノテク」です。
実は意外に応用範囲が広く、中小企業でも活用が進みつつある「ナノテク」への取り組みを進めるヒントを紹介します。

“多彩な可能性を秘めたナノテクは意外に身近

1nm(ナノメートル)は1mm(ミリ)の100万分の1で、原子数個分の大きさです。このナノレベル、つまり原子や分子レベルで物質を制御する技術がナノテク。一歩先の「ものづくり」を行う手段として、エレクトロニクス、バイオ、環境、化学などさまざまな分野から期待を集めています。

そもそもなぜ、これほどナノテクに注目が集まるのでしょうか。ナノテクを活用すればより小型で高性能の半導体や大容量のメモリを製造できるようになります。また、小さくても表面積の大きい構造ができれば、触媒やセンサーの機能も高まるでしょう。医療品や化粧品の分野では、より「効く」仕組みをつくることも可能になります。

ポイントは「物資をナノサイズまで小さくしたり、構造をナノレベルで制御したりできると、物質に新しい性質が生まれる」という点にあります。その結果、物質の強度や弾性を高めたり、物資に電気的・磁気的な特性を与えたりすることができるようになって、「ものづくり」に役立つ新素材が生み出せる。例えば光を当てるだけで空気中の有害物質を吸収するフィルターや建材などもつくれるようになります。

ただ、「物質をナノレベルで制御」というと、自社には手の届かない高度な技術だと考える企業も多いでしょう。しかし、顧客の要望に応じるため、製品の質をより高めるため、あるいは競争力のある新しい事業の柱をつくるため、自社のコア技術を磨き、自らナノテクに取り組む中小企業は多数存在します。

東京都のあるメッキ企業では、若手社員を大学院で学ばせて最新の技術や情報を取り入れるとともに、走査型電子顕微鏡の導入といった設備投資も行った上で、大学との共同研究を実施。自社技術をレベルアップし、紫外線や熱への耐性を高めた新メッキ技術などを開発しました。燃料電池などに利用される金メッキの加工を通常の1/1000となるナノレベルで行うことで、使用する金の量を削減できるというメリットも生まれています。

また、たとえ技術の自社開発が難しい場合でも、他社の開発した製品やサービスを取り入れて自社製品の質を高める方法もあります。そう考えると、どんな中小企業にとっても、ナノテクの活用が開かれていることが分かるはずです。

ナノテクの活用が事業の強化につながる

中小企業がナノテクを事業に活かすために、どのような方法があるでしょうか。

なかには高い技術力を活かした自社製品によって、他社の「ナノテク」活用を促進するような中小企業も存在します。例えば大阪府のある産業機器メーカーは、10nm以下の微粒子をスピーディーに製造できる微粒化装置を開発。医薬品・食品・化学・電子材料など幅広い分野の顧客企業が、量産したナノ材料を使って競争力の高い製品づくりが行えるようになりました。昨年にはその成果が認められ、特許庁長官表彰も受賞しています。

自社でナノテクを活かした新素材を開発して販売する、あるいはナノレベルの高度な加工技術を他社に提供する、という形で活躍する中小企業も少なくありません。例えば量産品の下請けを行っていたある企業では、交流会で知り合った大学教授と連携して自社の技術を進化させ、世界唯一のナノ微粉体への表面処理技術を開発。DNAチップの基幹部品などで世界1位のシェアを誇るようになりました。

また、取引先の打診をきっかけにガラスメーカーがガラス表面処理に挑戦し、ナノレベルの技術で熱や衝撃に強いガラス反射鏡などを開発した例、精密工作機械メーカーが海外への生産拠点シフトなどが進む現状に危機感を抱いて加工技術を磨き、ナノレベルの精度を実現するといった例も存在します。さらに、ナノ単位での測定ができる顕微鏡で髪の毛の断面を観察し、より効果の高いブリーチ剤を開発するなど“ナノレベルの観察”を製品づくりに活かした例もあります。
このようにナノテクは、アイデア次第で多様な活用法があり、さらにその結果が事業価値の向上に結びつきやすい分野と言えるかもしれません。

国もナノテクのイノベーション創出を後押し

では中小企業がナノテクに取り組もうとする場合、まずどこからスタートするべきかですが、第一には市場のニーズを見極め、自社の技術を再評価し、取り組みの方向性や手段を検討する必要があります。その際に有効なのが、文科省が産業界・学術界のナノテク研究とイノベーション創出を促進するため、2012年にスタートさせた「ナノテクノロジープラットフォーム」事業です。公式サイト「ナノテクジャパン」上では、優れた活用事例や「ナノテク」関連情報なども紹介されており、気軽に幅広い情報を収集することができます。

またこの事業では、ナノテクの最先端研究設備と活用ノウハウを持つ大学や研究機関が連携。一般中小企業も含めた産官学のさまざまな利用者が、各研究機関の設備を利用できるようになっています。研究機関は設備の貸し出しのほか技術相談や支援技術代行といったサービスも提供しており、共同研究を行うことも可能です。

日本の産業界がナノテクに期待するのは、競争力アップに役立つから。現在、「ものづくり」分野では新興国が品質面での追い上げを見せ、コスト競争も激化しています。そんななか、ナノテクを活かした素材や加工を製品に取り入れて差別化を図るナノテク利用企業、またそうしたナノテク関連製品・サービスを提供する企業は、さらに増えていくことでしょう。

新技術であるナノテクの活用では、経営者の判断次第でスピーディーに動ける中小企業の身軽さが有利に働くはずです。改めて足下を見直せば、ナノテクの種が自社に眠っていた──ということもあり得るでしょう。まずは情報収集から始めてみると、何か新しい発見があるかもしれません。

■ウェブサイト「ナノテクジャパン」(「ナノテクノロジープラットフォーム」事業)
https://www.nanonet.go.jp

■文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」共用設備利用案内サイト
https://www.nanonet.go.jp/yp/

FROM J-GoodTech

今回の「中小企業最前線」はいかがでしたでしょうか。
本シリーズでは、今後もさまざまな業界を取り巻く話題のキーワードを切り口に、
ビジネスのヒントとなる情報をみなさまに提供していきます。

本シリーズとの連動企画として、下のボタンからジェグテックにログインしていただくと、
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さらなる情報収集ができる場となっておりますので、そちらも是非ご覧ください。

次回テーマは「AI」です。どうぞご期待ください。

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「ナノテク」に取り組んでいる企業

  • 株式会社名城ナノカーボン

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    最先端カーボンテクノロジーを提供

  • 冨士色素株式会社

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    ナノサイズ微粒子分散技術を活かして事業展開

  • 大研化学工業株式会社

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    ナノ分散技術で次世代製品開発

  • 株式会社ナノクス

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    [ラモンドナノミキサー]高密度のナノバブルを高効率に生成

  • 株式会社マイクロフェーズ

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    [卓上CVD装置]垂直配向CNTやグラフェン膜を簡単に合成できる廉価な装置

  • 株式会社生体分子計測研究所

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    [高速原子間力顕微鏡]高分子、蛋白質、細胞などの微細な構造変化や反応をリアルタイムに動画で観察

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