未来が変わるビジネスマニュアル
第1回テーマ「Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ)」
IoTなどを生かしたデータの連携活用で生産性の向上を
最近よく耳にするこの言葉って、うちの会社とどう関係してくるの?
「中小企業最前線」は、そんな疑問にお答えしていく新シリーズ。
産業界で話題のキーワードを毎回テーマとして取り上げ、
各テーマが中小企業に与える影響や
考えられるビジネスチャンスなどを交えて説明していきます。
第1回のテーマは、日本政府が第4次産業革命における競争戦略として掲げた
「Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ)」。
中小企業がIoTなどの新技術を上手に活用していくためのヒントも紹介します。
“第4次産業革命”を生きる日本の競争戦略
IoT、AI、ロボット、ビッグデータなどの新技術が、社会に第4次産業革命といわれる大きな変化をもたらす——。そんなビジネス誌の見出しを読んでも、「うちの会社にはまだ先の話だな」と思う人は少なくないでしょう。しかし一方で、こうした新技術を会社の規模や予算に合わせて上手に取り入れながら、大きく飛躍している企業があったとしたらどうでしょうか。
京都にある金属加工メーカー・HILLTOPでは、職人技をデジタル化することによって工場の24時間無人稼働に成功。社員数20名強の下請けの町工場から、シリコンバレーなどに約400社の顧客を持ち、京都、東京、米国各所の拠点に、合計約120名を抱えるグローバルメーカーに発展しました。
このように、これからの時代の産業界の主役は、米国IT企業や大手メーカーとは限りません。変革の波は、実はしっかりと私たちの足元にまで届いているのです。
そんな状況のなか、自国の産業の競争力を維持するため、各国ともさまざまな努力を重ねています。例えばドイツは早くから「Industry4.0」という名称で、IoTなどを活用した製造業のデジタル化に国家戦略として取り組んできました。そして2017年、デジタル化が進むなかで日本が目指すべき姿として発表されたのが「Connected Industries」。言い換えれば、第4次産業革命における日本の競争戦略となります。
「ヒト、技術、機械などが、先端技術によってデータを介して“つながる”ことで、新たな付加価値が創出される産業社会」というのがその内容。身近な例としては、たとえばセンサーを用いた工場などの自動化・遠隔監視などが考えられるでしょう。工場にある機器の稼働状況をIoTなどによってインターネット上で把握できれば、スタッフがわざわざ工場に残る必要はなくなり、工場の無人稼働も視野に入ってきます。また、取引先に納めた機器の稼働状況が分かれば、タイミング良く保守サービスを提供したり、より付加価値の高い製品を開発したりするのにも役立つでしょう。
近年はデータ通信の環境が向上し、データの保管・処理に掛かるコストも低下。そしてセンサーなど機器の価格も下がりました。その結果、「Connected=〝つながった〟」の中核技術となるIoT化は、中小企業にとって手の届かないものではなくなっています。
社会とものづくりはこう変わる
「Connected Industries」で活用される新技術は、もちろんIoTだけではありません。AIやロボットは、あらゆる産業で単純作業の労力を大きく減らしてくれるはずです。「Connected Industries」のキーワードである「データ」の処理は、当然AIの得意分野。企業に蓄積された膨大なデータの分析で、顧客ニーズの把握や業務改善もより効率的に行えるようになります。加えて、調達・生産・流通・販売といったサプライチェーンの関連データを一括管理できれば、大量の在庫で倉庫が埋まったり、製品が足りずに販売機会を失ったりすることもなくなるでしょう。
これらの技術も、サイズ感や予算感も幅広いバラエティーに富んだソリューションが多数登場しています。デジタル技術を上手に活用しながら、日本企業の強みである「技術力」や「現場力」を生かし、人間本位の産業社会を作る。これが「Connected Industries」の基本的な考え方なのです。
さらに言えば、「Connected Industries」では、「モノ」同士のつながりだけを、“Connected”と捉えているわけではありません。モノとモノ、人と機械、人と人などが企業、業界、国境を越えてデータ連携されることで、生産性の向上に加えて技術革新が加速。これにより人手不足、高齢化、環境・エネルギー問題といった社会の課題が解決され、日本の国際競争力や経済力も向上する。そんな未来を目指しています。
注力分野に挙がっているのは、「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ・素材」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」の五つ。特に「ものづくり、ロボティクス」では、「中小企業向けIoTツール等の基盤整備」を、重要な取り組みとして挙げているのがポイントです。そして政府も、中小企業がデジタル技術を活かして効率的に付加価値の高いものづくりが行えるよう、多面的な支援で後押している。そんな今は、中小企業にとって、先端技術を導入する絶好のタイミングと言えるでしょう。
政府も中小企業の基盤整備を多面的な取り組みで後押し
政府は具体的に、どのような支援を行っているのでしょうか。
「まず何ができるのか、どんな効果があるのか知りたい」という企業に向け、「IoT投資効果算定ツール」などをWeb上で配布。また、「ものづくり・ロボティクス」分野の推進主体であるロボット革命イニシアティブ協議会が、IoT導入の成功事例をサイト上で「IoTユースケース マップ」として公開しています。同協議会はこのほか、おすすめのIoTツールを「スマートものづくり応援ツール(IoT)」として選定。省エネに役立つエネルギー監視システム、設備診断や故障予知のためのIoTセンサーパック、製品開発を短縮する設計情報/技術情報管理システムなどを紹介しています。
もう一つ話題を呼んでいるのが、IoTなどに秀でた専門の人材を企業に派遣し、各社の課題に応じた助言を行う「スマートものづくり応援隊」です。例えば、検品作業の効率化を希望するメーカーには、ヒアリングをもとに、応援隊がUSBカメラによる画像認識を利用したシステムなどを提案。その上で複数回訪問し、検証や導入サポートを行うといった活動を実施しています。
資金面でも、「コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)」という優遇制度を設けたほか、「ものづくり補助金」の適用範囲を拡大するなど、導入を支援しています。また日本政策金融公庫も中小企業に向けた「IoT活用融資」をスタートしました。
デジタル新技術は、人手不足解消の切り札。その上、付加価値の高いものづくりや短納期・低コストでの生産が可能になれば、言うまでもなく収益アップも実現します。実際に、設備の稼働状況確認や進捗管理にタブレット端末を使ってQCDが向上した、産業用ロボットを活用して労力が大幅に削減したなど、すでに多数の導入成功例が生まれています。 「Connected Industries」は、あらゆる中小企業にとって、自社の課題を解決し、次なる成長フェーズへと移行するチャンスです。この潮流を追い風にすれば、企業を大きく伸ばす推進力になってくれるでしょう。
FROM J-GoodTech
今回から始まった「中小企業最前線」はいかがでしたでしょうか。
本シリーズでは、今後もさまざまな業界を取り巻く話題のキーワードを切り口に、
ビジネスのヒントとなる情報をみなさまに提供していきます。
本シリーズとの連動企画として、下のボタンからジェグテックにログインしていただくと、
実際に「Connected Industries」に取り組んでいる下記表示の企業事例や
ソリューション提案などを紹介したトピックスもご覧いただくことができます。
本テーマに関して、関心のある企業間での交流の機会も提供しており、
さらなる情報収集ができる場となっておりますので、そちらも是非ご覧ください。
次回テーマは「nano tech」です。
どうぞご期待ください。
「Connected Industries」に取り組んでいる企業
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株式会社JKB
ITによる高生産性と高品質を実現。
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株式会社今野製作所
手間のかかる受注生産品をIT活用で他社と差別。日本版インダストリー4.0で注目の「IVI」に参加し、IT、IoT活用に取り組む。
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HILLTOP株式会社
HILLTOP Systemにより多品種・単品・24時間無人稼動を実現。
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株式会社システック井上
スマート工場の実現に向けたソリューションを提供。
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株式会社インフォコーパス
ミッションクリティカルで使えるユニバーサルなIoTプラットフォーム。
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株式会社FAプロダクツ
スマートファクトリー化、IoT化に向けて最初の一歩を支援。