ジェグテックでは、今後も医療機器市場を重視するとともに、
こうしたリアルイベントの機会を多様な分野で提供していく予定です。
定期的にニーズやトピックなどの機能をご活用いただき、医療機器市場への進出・拡大の第一歩としてください。
世界的に市場は成長し、広い分野へ波及効果も
セミナーでは経済産業省の医療・福祉機器産業室・桂井直子室長補佐が基調講演を行いました。桂井氏によると、医療機器のグローバル市場の成長は明らかとのこと。
「高齢化の進展や新興国の需要拡大を受け、医療機器の市場規模は拡大しています。国内市場も2004年以降、増加基調にあり、約3兆円の規模となっています。金額ベースでの内訳はカテーテル、ペースメーカー等の治療機器が約60%を占め、内視鏡やCT、MRI等の診断機器が30%。治療機器は診断機器に比べて市場規模が大きく成長率も高いのですが、輸入比率が高いのが実情です」。
輸出入の数字だけでは、単純に国際競争力は測れませんが「治療機器の分野でも、日本発の医療機器が増えて欲しい」と桂井氏。
医療機器産業に対しては、主にAMEDを通じてさまざまな支援策が講じられています。その中で、経済産業省はものづくり中小企業、医療機器メーカー、医療機関等のコンソーシアムの医療機器開発を支援する医工連携事業化事業を行っています。
桂井氏は、ものづくり中小企業に、こう期待を述べました。
「医療機器は仕様が厳格なだけに、日本の高度な製造技術が生かせる分野だと思います。国内での研究開発が増え、部材も含めた調達の幅も量も拡大していくことが望まれます。医療機器は自動車や家電と違って、開発者自身が使ってみることができません。そのため、医療機器の開発においては、ニーズ探しから試作後の改善に至るまで、医療従事者との密接な連携が不可欠です。国際的に見て非常にレベルが高いといわれている日本の医師と連携がとりやすいという点で、国内企業は優位でしょう。多くのものづくり中小企業に、医療機器分野へ進出していただきたいです」。
さらに桂井氏が強調するのは、医療機器分野に参入することで、その枠を超える成長性を享受できる可能性もあるということ。
「当室が講演等でご紹介している将来像なのですが、これからは予防に貢献するヘルスケアの価値が、エコロジーの価値と同じように、いろいろなモノに付加されていくのではと考えています。『エコロジー』は、元々は省エネやリサイクルの分野で始まりましたが、その後、幅広い分野に広がっています。既に、『住むだけで健康になる住宅』のようなコンセプトが生まれているように、ヘルスという付加価値が広まって行くようになれば、医療機器の分野で培った知見を幅広い分野で発揮できると思います」。
近年、医療機器を含むヘルスケア産業への関心が高まる一方で、医療機器メーカーの製造に欠かせない部材の調達が、供給側の企業に断られてしまうケースが少なくありません。これはなぜなのでしょうか。
PL法や技術水準は、参入を阻まない
「第7回医療機器技術マッチングサイト交流セミナー」の主催者、MTJAPANの産業基盤ワーキンググループ・高橋尊氏も、講演のなかで部材供給の問題を取り上げ、「ジェグテックとの連携が一つの改善策になるのではないか」とジェグテックと連携する目的をお話しいただきました。
MTJAPAN会員向けアンケートから部材供給を拒否された理由ははっきりしており、「医療用途に使用することへの懸念が約7割です(図2)」と高橋氏。
しかし、なかでも製造物責任(図2の「PL訴訟が怖い」)の認識には誤りがあります。まず、選んだ部材の安全性・信頼性に対する評価は、医療機器メーカーに責任があります。
また、医療機器メーカーの仕様に基づいて部材を供給した場合、万が一その部材に欠陥が生じても、供給企業側は過失がない限り免責されると、製造物責任(PL)法では定められています。
ただし、供給企業と医療機器メーカーとの間の契約では、仕様に対する品質の担保などが求められます。医療機器以外の取引と同じく、仕様書による責任の明確化や保証の範囲などの協議は大切で、適切な契約を交わすことが必要でしょう。
もう一つ、医療機器に対する抵抗感の理由は、要求される技術水準がきわめて高いようなイメージにもあります。その点の実状も、高橋氏が教えてくれました。
「確かに水準は低いわけではありません。しかし、例えば自動車への部材供給に実績があれば、まず大丈夫です」。
さらに、高橋氏が挙げた医療機器分野のメリットは次のとおりです。
「医療機器は、いったん実用化すれば、部材供給企業を変更しないのが通例です。そして同じ仕様の部材供給が5〜10年の長期間、継続するのもメリットです。機器によって市場に出回る数は、数10〜1000といった規模ですが、逆に大量生産の設備や人員がなくとも対応しやすいといえます」。
経産省の桂井氏が語った市場の有望性や、高橋氏が指摘したPL法に対する誤解や中小企業にとっての医療機器分野のメリットなどを考えると、「医療機器だから」というだけで部材供給を拒むのは、機会の損失になりかねません。新興国のものづくり企業がボリュームゾーンを席巻している以上、日本のものづくり中小企業は、医療機器を含む高付加価値の分野を狙うことによって将来に向け発展していく道を切りひらくことが必要です。
経済産業省などによる『医療機器の部材供給に関するガイドブック(改訂版)』も、新規参入への参考になります。これはウェブ上で公開されています。
医療機器産業への本格参入に挑戦中の企業も出展
MTJAPAN主催「第7回医療機器技術マッチングサイト交流セミナー」では、展示会も催され、厳選された23社の中小企業が出展しました。
その1社、あるゴムメーカーは約4年前、鉛に代わってX線を遮蔽する特殊なゴムで医療機器分野に参入。「従来の土木・建設分野と違い、まだ販路に難しさを感じている」と表情を引き締めつつも、「展示会やマッチングサイトも通じて好機を見出し、市場を獲得していきたい」と市場開拓に意欲的でした。
ある精密部品加工会社は、「ドクターから当社単独で対応できない要望が来た場合はジェグテックや商談会などでパートナーを探すこともある」と、外部リソースとの連携にも積極的。
また別の加工会社は「いまは試作品の依頼が多いが、医療機器分野は加工会社が存続するための重要な市場。『現状維持は衰退と同じ』という経営方針で、積極的に取り組みたい」と力強く語りました。一方で「展示会は初心者。3年間はいろいろ出展を試し、成果をみきわめたい」としたうえで、「今日のような小規模な催しは、むしろ効果的ではないか。大きな見本市だと、ただチラシを配るだけの結果になりやすい」と、業界を絞った小規模なイベントに参加するメリットを聞かせてくれました。
さらに、ある電子機器メーカーは「医療は絶対に伸びる市場。仕事をどんどん増やす方針で、ISO13485(医療機器等の国際認証)も取得した。ただ、電子部品の調達には苦労もある」とのこと。また「今日は、こちらが売り込むつもりが、売り込まれました(笑)」と、リアルに対面するイベントらしい一コマも聞かせてくれました。
MTJAPANの高橋氏によれば、この日は大手医療機器メーカーが約60社も来場。ものづくり中小企業に大手医療機器メーカーとのコンタクトをとるチャンスがもたらされました。
今回、初めてのジェグテックとの連携を行い、高橋氏の感想と今後の抱負を聞かせてもらいました。
「私が企画を担当した過去4回のなかで、一番の成功でした。ポジティブな出展企業を推薦してもらい、他への刺激にもなった。今後も日本の医療機器産業の発展のため、国内外への発信力に優れたジェグテックと連携していきたいと思います」。