J-GoodTech ジェグテック

マッチング成功事例

食品残渣のアップサイクルを中小企業と共創する
ハウス食品グループ本社株式会社

ABOUT COMPANY

国内では持続可能な開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)を
取り入れる大企業が増えつつあります。

SDGsは経済、社会、環境などの分野で2016年から2030年までの15年間に達成を目指す17の目標のことで、
2015年9月の国連サミットで採択されました。

ハウス食品グループ本社株式会社(以下、ハウス食品グループ本社)でも、
社会に対する責任として「人と地球の健康」を目指し、二酸化炭素や廃棄物の削減、限りある資源の有効活用などを進め、
SDGsの推進に繋がっています。

リサイクルだけではなく、新たな価値を生み出すアップサイクルに取り組み、食品残渣を紙の原料にして名刺を作ったほか、
規格外で製品に適さないスパイスを使ったクレヨンなどを開発しています。

こうしたアップサイクルの取り組みは、
自社の組織や研究機関以外から技術を取り入れるオープンイノベーションの手法で進められ、
独自の技術を持った中小企業と共創することで実現しています。

オープンイノベーションによるアップサイクルをどのように進めているのか、
ハウス食品グループ本社のご担当者の皆さんに伺いました。

未利用資源の活用のために取り組むためオープンイノベーションを強化

ハウス食品グループ本社は、カレーをはじめとする香辛・調味加工食品や健康食品などを国内外で製造・販売しているほか、外食事業も展開しています。廃棄物の削減とリサイクルには以前から取り組んでいます。

これまで行ってきたリサイクルに加えて、最近では新たな付加価値を持たせることで新しい製品として生まれ変わらせるアップサイクルに着目し、オープンイノベーションを活用して試験的に取り組みを進めています。他社の技術を活用する理由を、イノベーション企画部の担当者は次のように説明します。

「アップサイクルを実現するには、社内だけではなく異業種の企業と取り組むことで発想を広げることができると考えています。当社にはない技術や知識を持つ企業と出会う機会を増やして行きたいと考えています」

異業種の企業と出会うために、ハウス食品グループ本社では以前から異業種交流会などの場に積極的に参加していました。その交流会の場で、参加していた企業から勧められたのがジェグテックでした。

「機械系や素材系の企業も登録していると聞き、当社もすぐに登録しました。ジェグテックでまずパートナー企業を探したいと思ったのが、食品残渣のアップサイクルです」

食品残渣のウコンの搾りかすを活用した製紙を検討

ハウス食品グループ本社が以前から温めていた食品残渣のアップサイクルのアイデアが、ウコンエキスドリンク「ウコンの力」の製造過程で出る、ウコンの搾りかすの活用でした。

「ウコンの力」では、ウコンを煮出すことでエキスを抽出し、ドリンクの原料にしています。一方で、ウコンの搾りかすには、鮮やかな黄色で、たくあんやカレーの色みの素になる色素のクルクミンが残っていることに着目し、この鮮やかな黄色を生かした紙を作れないかと考えるようになりました。

しかし、「ウコンの力」を製造するハウスウェルネスフーズ株式会社(以下、ハウスウェルネスフーズ)の担当者は、「なかなかうまくいかなかった」と当時を振り返ります。
「社内の研究所で手ですいて試作したこともありますが、紙らしいものはできず、どうすれば実現できるのかわかりませんでした。2018年に社内のワーキンググループでウコン色の名刺を作るアイデアが出たことで、改めて具現化の検討を始めました。ただ、取引のある企業に相談しても、ロットのサイズが合わないことなどが課題となり、前には進みませんでした」

そこで、ジェグテックを活用して、ウコンの搾りかすの加工から製紙までを一貫してできる企業を探しました。ジェグテックに登録している企業から約10社を中小機構にピックアップしてもらうことで出会ったのが、福井県越前市の伝統産業「越前和紙」のメーカーである山伝製紙株式会社(以下、山伝製紙)でした。

山伝製紙の技術で想像を超えたものができた

ハウス食品グループ本社が山伝製紙と商談を始めたのは2019年の夏です。ジェグテックに登録されていた内容に、お茶がらやい草をすき込んだ和紙を製造した実績があったことから興味を持ち、社長の山口和弘氏と面会しました。

「山口社長にウコンの搾りかすを見せて紙を作りたいと相談しました。山口社長はとても人柄の良い方で、和やかに話を聞いていただきました。その場で『これはできますよ』と言っていただいたので、すぐに取り組みが始まりました」

山伝製紙からはウコンの搾りかすを乾燥させて、水に溶けるぐらいにまで細かく粉砕することで、紙に練り込むことを提案されました。試作のたびにウコンと紙の原料の割合を微妙に変えたいくつものパターンの和紙を確認しながら、山伝製紙へ要望を伝えていきました。

その結果、2020年春に、鮮やかな黄色で、手触りのいい和紙が出来上がりました。ハウス食品グループ本社とハウスウェルネスフーズの担当者は、「想像以上のものができた」と山伝製紙の技術力の高さを感じました。
「山伝製紙の技術力は思った以上でした。きれいな色の和紙で、かなりいいものができたと思っています。この和紙を使った名刺には、『ウコンの搾りかすを含む紙を使用しています』と記載しました。名刺を渡した時に、話の種になるので、社内外の評判もいいですね」(ハウスウェルネスフーズの担当者)

完成したウコンの搾りかすを含んだ和紙

出来上がりが良かったことから、2020年からハウスウェルネスフーズの名刺として活用しています。さらに、社外に送る封筒や便箋への活用も検討しており、再び山伝製紙に和紙の製造を依頼する予定です。

ウコンを使ったアパレルやスパイスのクレヨンも

ウコン色のショッピングバッグ

ハウス食品グループ本社では、山伝製紙の他にも様々な企業と食品残渣や廃棄物のアップサイクルに取り組んでいます。繊維業大手として長い歴史を持つ豊島株式会社が展開する「FOOD TEXTILE」にパートナー企業として参画しました。「FOOD TEXTILE」は食品廃棄物が持つ色で繊維を染め上げて、アパレルの商品を開発するもので、2020年からウコンの色を使った衣料品を製造できるようになっています。

また、同じ2020年には、スパイスを生産する過程で規格外だったために、廃棄せざるを得なかった原料を有効活用しようと、10色のクレヨン「彩るスパイス時間CRAYONS」を開発しました。これは規格外の野菜を使った「おやさいクレヨン」を作っているmizuiro.incと協業して実現したものです。原料には、ウコン以外も含む10種類のスパイスを使用。クラウドファンディングで支援者を応募したところ、1400人を超える人が支援し、支援総額は目標金額を大きく超える400万円を記録するなど、大きな反響がありました。

彩るスパイス時間CRAYONS

ハウス食品グループ本社では、オープンイノベーションによって、廃棄物を活用する際の発想が確実に変わったと感じています。

「知らない技術に触れることで、新しい考え方を習得できます。何よりも、私たちがなんとなく考えていることを、中小企業のみなさんにモノとして具現化していただけるのは大きいですね」

今後もアップサイクルを進める上でハウス食品グループ本社が期待しているのは、意外性のある企業との出会いです。中小企業がどのような技術を持っているのか、その技術をどのように活用したらニーズを実現できるのかを知る手段として、今後もジェグテックを活用したいと話しています。

「これまではこういう技術がほしいと、前もって決めてからジェグテックを活用していました。でも、ジェグテックには私たちが知らない技術を持っている企業も多く登録されていると思います。アイデアを考える段階から、尖った技術を持った企業と気軽にディスカッションすることで、これまでになかった新しいものを生み出していけるのではないかと期待しています。様々な企業と一緒に新しいことに取り組んできたいですね」

FROM J-GoodTech

ハウス食品グループ本社は、ウコンの食品残渣を活用して紙を作りたいというアイデアを、
山伝製紙とのマッチングによって実現しました。

これまでも本業の食品の分野では様々な企業と協業していましたが異業種との協業によって、
SDGsの推進や廃棄物の削減に新たな発想で取り組むことができているそうです。

大企業が取り組もうとするイノベーションには、
中小企業が持つ独自の技術が有効に働くケースが多々あると考えられます。

ただ、お互いに知らない状況があります。
その際に、ジェグテックがコラボレーションできる企業と出会える場になればと考えています。

ジェグテックではこれまで商談会などを開催して、リアルな場でも大企業と中小企業が出会える場を作ってきました。
今後も商談会の開催とともに、大企業が取り組むイノベーションの情報発信を進めていきます。

日本の中小企業には、山伝製紙のように伝統的な技術を生かしながら、新しいものを生み出せる企業がたくさんあります。
ニーズに合った企業を見つけるために、ぜひジェグテックを活用してみてください。

幅広く事業展開を目指す企業の方は、
ぜひジェグテックをご活用ください。

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