J-GoodTech ジェグテック

マッチング成功事例

伝統産業と大企業がマッチング 食品残渣から鮮やかな色の和紙を製造

山伝製紙株式会社 代表取締役社長 山口和弘氏

ABOUT COMPANY

日本一の和紙産地として知られる福井県越前市で、
江戸末期に創業した和紙メーカーの山伝製紙株式会社(以下、山伝製紙)
ジェグテックによって食品メーカーのハウス食品グループ本社株式会社(以下、ハウス食品グループ本社)とマッチングし、
ウコンの食品残渣を活用して和紙を抄くことに挑戦しました。

当然ながら、食品残渣で紙を作るのは簡単ではありません。
原料を石臼で繰り返し挽いて細かくし、何度もテストを重ねた結果、
1年半かけてウコンの鮮やかな色を生かした和紙が完成しました。

山伝製紙7代目社長の山口和弘氏は、
今回の取り組みによって新しい技術を手に入れるとともに、新たなビジネスモデルを生み出す可能性を感じたと言います。
食品残渣を原料にした和紙を完成させた過程を伺いました。

ジェグテックを通じて大企業から声がかかる

福井県越前市は「越前和紙」の名で知られる日本一の和紙産地です。1500年の長い歴史と、高い品質と技術を誇り、現在も約70社が福井県和紙工業協同組合に加盟して伝統を守っています。江戸末期に創業した山伝製紙は、伝統的な越前和紙だけでなく、機械抄きによってさまざまな機能紙なども生産する大手の和紙製造メーカーです。現在は全国のお酒のラベルや、サンドペーパーの下地の和紙などが主力の製品で、多様な原料を使用した和紙を作ることでは突出した技術を持っています。

山伝製紙7代目社長の山口和弘氏と工場
写真左:山伝製紙7代目社長 山口和弘氏 / 写真右:社屋(2021年2月撮影)

しかし、販路や取引先の拡大については、伝統産業ならではの悩みを抱えていると山口氏は話します。
「伝統産業は私たちメーカーからユーザーに商品が届くまでに、問屋や商社など多くの会社が間に入っています。ふすまの場合、5社から6社ほどが関わります。そうすると、ユーザーはメーカーが卸した価格から倍近い値段で購入することになり、競争力が落ちてしまいます。質の高い製品を適正な価格で提供する手段はないかと常々考えていました」

山口氏は新たな取引先との出会いを模索して、ジェグテックに企業情報を登録。すると、ハウス食品グループ本社から連絡が入ります。ウコンエキスドリンク「ウコンの力」の製造過程で出るウコンの絞りかすを使って、名刺に使う和紙を製造してほしいというものでした。山伝製紙ではそれまで、お茶がらなどの食品残渣を利用した和紙を抄いた経験がありましたが、ハウス食品グループ本社の相談内容に応えるには新たな挑戦が必要でした。

ウコン絞りかす(食品残渣)
ウコン絞りかす(食品残渣)

「お茶がらを利用した和紙の場合は、お茶がらを細かくして異物として混ぜる方法で作りました。しかし、ウコンの場合は原料として入れるだけではありません。ウコンは見た目は茶色に近いですが、黄色の強い色素を持っています。この色を生かして和紙を作ることになり、当社としても経験がない製法でした。それでも、食品残渣をなくそうというハウス食品グループ本社のSDGsへの取り組みを聞いて、少しでもお役に立てればと思い引き受けました」

課題はどのように色を定着させるか

交渉が成立してハウス食品グループ本社から届けられたのは、冷凍保存されて一斗缶に詰められた大量のウコンの搾りかすでした。

まず、搾りかすを解凍してミンチ状に潰します。一旦乾燥させて、石臼で挽いて細かくしてから原料と調合。和紙を抄いて、ウコンの色を定着させます。しかし、いざ始めてみると、次々と課題が明らかになってきました。一つはウコンを完全に水に溶かすには、どれだけ細かくする必要があるのかわからなかったことです。通常、紙に色をつける場合は染料を水に溶かすだけでした。ウコンが水に溶けるかどうかを探りながら、細かくしていきました。

ウコンを細かく粉砕した石臼
ウコンを細かく粉砕した石臼

「ミンチ状にしてから、石臼で1回挽くと1粒が700ミクロンになります。これでは粒が大きすぎて、きれいな色がでませんでした。さらに細かくして300ミクロンにして試してみましたが、やはりうまくいきません。最終的には100ミクロンまで小さくすることで、ようやく水に混ぜて溶かすことができました」

もう一つの課題は、ウコンの色を紙に定着させることでした。細かくしたウコンの粉と、紙の原料の配合を調整しながら、どのような色が出るのかを何度もテストしました。しかし、定着させるためのハードルが高かったと山口氏は言います。

「ウコンは非常に鮮やかで強烈な黄色を出します。ところが、強烈な色は日焼けしやすく、すぐに色が飛んでしまう傾向があります。ウコンの鮮やかな色を壊さないように原料を調合し、かつ、日焼けから守る必要がありました。さまざまな方法を検討した結果、一旦紙を抄いた上で、日焼けを防ぐための薬品をコーティングしました。通常よりも何倍も手間をかけ、何とか半年かけて最初の試作までもっていきました」

色にこだわって何度もサンプルを試作

この道具で何度もサンプルを制作
この道具で何度もサンプルを制作

試作の段階に入ると、山口氏はハウス食品グループ本社の担当者に直接来てもらった上で、さまざまなテストサンプルを作ります。一番こだわったのは、やはりウコンの色でした。

「ある程度色を出せるようになってから試作を始めましたが、それでも思ったよりも色が薄いものや、少し色がはげて見えるようなサンプルもありました。これがウコンだという色を出せるまで何度も繰り返しました」

山口氏は担当者が納得できるものになるまで、何度もサンプルを作りました。当時作ったサンプルの数々を見ると、微妙に色合いが異なるほか、紙の厚さ、質感、手触りもそれぞれ違っています。テストを重ねてついに、色鮮やかなショッキングイエローの和紙が出来上がります。

「ようやく思い通りの色にたどりついたのは、試作を始めて半年くらいが経った頃ですね。ハウス食品グループ本社の皆さんにも満足していただきました。これまで扱ったことがない、ウコンの残渣を利用して紙を製造していく過程の一つひとつは大変でしたが、最終的にはお客様に喜んでいただけたことでお客様の喜ぶ顔を見ることができましたので、振り返れば楽しかったですね」

当初は持ち込まれたウコンの搾りかすを全て使い切る予定ではありませんでした。しかし、ハウス食品グループ本社側で出来上がった和紙の新たな用途が決まり、最終的には搾りかすを全て使い切りました。

「相談いただいた当初は名刺に利用するための量だけ紙を作るという計画が、名刺以外のダイレクトメール用封筒などへの利用も加わり、最終的には200キロから300キロの和紙を納めさせていただきました。出来上がった名刺や封筒が社員の皆さんに活用されているのを見て、私たちとしても嬉しい限りです。ハウス食品グループ本社の皆さんの熱意のおかげで、普段の商談にはない経験ができました」

ウコンの搾りかすから色鮮やかな和紙が完成
ウコンの搾りかすから色鮮やかな和紙が完成

商談成立の背景は社内での一環生産体制

山伝製紙とハウス食品グループ本社の商談は、2019年夏から始まりました。年末から試作に取り組み、2020年夏に納品しています。当初は半年くらいでの納品を考えていたものの、思い通りの色ができるまで予想よりも時間がかかったと山口氏は言います。

写真左:原料を溶かす工程 / 写真右:マスキングの工程
写真左:原料を溶かす工程 / 写真右:マスキングの工程

「和紙ができた後は、同じ機械で白い和紙を抄くことになりますので、ウコンの色を抜くための掃除も大変です。後片付けにも、製造と同じくらいの手間がかかったのではないでしょうか」

それでも、大企業のハウス食品グループ本社と商談ができたことには、大きなメリットを感じたと言います。
「結果的には私たちとしても、食品残渣の搾りかすから素材の色を生かした和紙を作るという新たな技術を手に入れることができました。この技術をノウハウとして蓄えられますから、非常にありがたいです」

紙ロール
紙ロール

一方で山口氏は、実際に商談に結びついた要因には、和紙の企画から研究、製品化まで、社内で一貫してできることが大きかったと振り返ります。

「和紙を抄くだけでなく、日焼けを抑えるためのコーティングや、色を安定させるためのプレスなどの工程を一貫して社内でできたことが、仕事をいただく上で重要だったと思います。セキュリティという観点からも1社で全てできる体制を持っていたことが、結果的に良かったと思います」

積極的に情報発信をしてユーザーを探す

山口氏は、食品残渣から紙を作る技術が大企業から認められたことで、他の企業にも働きかけを始めました。「すでに卵の殻を使った紙を作る相談もいただいています。食品関係では衛生管理のHACCPシステムを導入して、廃棄物の削減に取り組んでいる企業が多いです。ただ、現状では家畜の餌にするといった処理がメインになっているのではないでしょうか。新たな活用方法として、当社の技術がお役に立つのではないかと考えています」

また山口氏は、今後はジェグテックの機能を有効に使いながら、積極的に情報発信をしていきたいと話しています。

「私たち製紙業のものづくりは、どちらかというと問屋に卸すものだけ作っていればいいという面があります。けれども、私自身は以前から、ユーザーのニーズを拾いたいと思っていました。今回はハウス食品グループ本社が取引先であり、ユーザーでもありました。ユーザーに直接情報発信ができるジェグテックの活用は、一つのビジネスチャンスだと感じています。当社が持つ技術を使っていただけるユーザーを、積極的に探していきたいですね」

FROM J-GoodTech

伝統産業である越前和紙の技術が、
大企業の食品残渣の再利用に生かされた今回のケースは画期的なマッチングでした。
実現に向けて技術面でのハードルは高かったと思いますが山口社長は妥協を許さず、
ハウス食品グループ本社が求める色や和紙の質感を見事に具現化していました。

今回の事例を知っていただくことで、
大企業には中小企業の技術や知見の活用に目を向けていただければと思います。
一方、独自の技術を持つ中小企業には下請けとして受注する形態から
新たなビジネスモデルを構築するヒントになるのではないでしょうか。

自社が持つ技術と付加価値を認めてもらえるパートナー企業を探すきっかけとして、
ジェグテックを活用していただければと考えています。

 
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ぜひジェグテックをご活用ください。

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