マッチング成功の鍵は、
目的と役割分担の明確化(後編)
C.C. AUTOPART CO., LTD. 社長 ブンラート・チョデチョイ氏
ABOUT COMPANY
タイ経済がどん底に突き落とされた1997年のアジア通貨危機。
同業他社が次々に廃業に追い込まれる中、C.C. AUTOPART CO., LTD.も倒産寸前に陥ります。
起死回生の一手は、OEM生産からの脱却。ピンチをチャンスに変え、新しいチャレンジにも臆さず飛び込む同社の姿勢が、
島根県にある企業との出会いにつながりました。
そうした話題を中心に、社長ブンラート・チョデチョイ氏に伺ったお話を、前編・後編にわたりお送りします。
島根県の丁寧で根気強いサポートがつないだ島根県の企業との合弁会社設立。
ブンラートさんと液固分離装置の出会いは2013年にさかのぼります。タイ下請産業振興協会 (Thai Subcontracting Promotion Association)会員企業による島根県、鳥取県、北九州市企業の訪問の場で、ブンラートさんは環境関連機器の設計や製作・販売・据え付けを手掛けている企業の担当者と話をする機会を得ました。
「当初、通訳がビジネスを理解していなかったため、最初は薬剤を売りたい会社だと勘違いしていました。しかしその後の懇親会で、タイ語の流暢な日本人が通訳をしてくれたら「液固分離装置をタイで作りたい」と考えていることがわかった。薬剤はその機械を回すときに使う製品ということでした。機械だったらうちの得意分野だし、機械自体も非常に良いものなので「興味がある」と答えたら、そこからはトントン拍子。2週間後には島根から担当者がやってきて、その1週間後には島根県の職員が来タイしました。県の職員は合計3回タイに来て、うちの会社について製品から取引先、機械リストまで調べ上げて作成した分厚いレポートを企業に渡していたそうです。ここまで自治体のケアが行き届いているケースはあまりないんじゃないでしょうか」。
出会いから1年後、ブンラートさんは企業と合弁で液固分離装置の販売会社をタイで設立。1年間の準備期間を経て、2016年から販売をスタートしました。C.C. AUTOPARTがOEMとして機械を作り、製造コストを従来の2分の1に抑え、合弁の販売会社が日本やタイに向けて販売する。この形にしたのは、取り引きを継続させるためです。
「OEMだけだと、ほかの会社に発注されることがあるかもしれません。でも、販売会社を作っておけば売るのはこちら。ずっとビジネスが続きます。OEMの仕事を受けるときも持続性を常に考えていますよ。うちにはほかの会社に頼んでできなかったような案件が飛び込んでくることが多いんですが、受ける条件は「もし実現できたら継続してやらせてもらうこと」。やって終わりでは意味がないですからね」。
製造と販売を分離する形で始めた液固分離装置の売上は好調そのもの。とりわけ、合弁の販売会社の日本人社長の貢献度は高く、今年から始まったタイ国内向けの販売も軌道に乗せています。
「液固分離装置の機能の高さと導入メリットを説得力を持って販売できる彼の手腕が大きい。経営には特に力を注いでいませんが、機械を売ってくれればそれでいいと考えています」。
明確な目的と優秀な通訳がビジネスマッチングを成功に導く。
液固分離装置とC.C. AUTOPARTとの出会いはビジネスマッチングの場でした。製品を売りたいのか、部品や材料を買いたいのか、あるいは投資をしたいのか。まず目的を明確にさせることがビジネスマッチングの第一歩。そう指摘するブンラートさんが成功の鍵として挙げるのが、腕の立つ通訳の存在です。
「液固分離装置もそうでしたが、最初は通訳のせいで話がうまく伝わっていなかった。化学なら化学の、機械なら機械の知識も備えた優秀な通訳を使うことが欠かせません」。
そしてビジネスパートナーが見つかり、日タイで連携事業をスタートさせることになったら役割を明確にし、それぞれの持ち分に集中することが重要だといいます。
「液固分離装置の製造に関しては日本人が品質管理を行っています。こういった体制を取ると、なぜ日本人が入ってくるのか、タイ人を信用していないのかと不満を漏らす会社もありますが、それではダメ。目的は精度の高い製品を作ることなのだから、プライドを捨てて従わなければ。従業員には、日本人の言うことを守りなさいと指導しています。衝突の原因を素から取り除くためです。仕事を任せたら信じることも大事ですね。日本人は自分のやるべきことをちゃんと遂行することはわかっています。個人の性格や行いよりもビジネスだけ見ていればいいんですよ」。
絶体絶命のピンチを乗り越える中で培ってきた技術力と豊富なノウハウはC.C. AUTOPARTの最大の武器。快進撃はさらに続きそうです。