株式会社関プレスのビジネスマッチングパートナー「富士電機機器制御株式会社」の取材記事を見る
関プレスの歴史には、常に先をゆく挑戦があった。
初代社長である関正男氏が、リヤカー1台で創業した鉄屑回収業から始まったという「株式会社関プレス」。その後1959年から、家電や自動車向けのプレス金型加工業ヘ大きく転換すると、さらに6年後には本格的に自動車部品生産へシフトし現在に至ると言います。「自動車産業は順調に伸びていったものの、2004年に私が社長に就任してからはリスクヘッジにも重きを置き、今ほど普及していなかったナビゲーションやエアバッグといった新しい分野の部品も手がけるようになりました」と、現社長の関正克氏は当時を振り返ります。「さらに、父の代から付き合いのあった取引先様からは“社長が変わったからには関係もゼロから”とも言われていましたね。つまりそれは、父から仕事を引き継ぐのではなく、自分の手で獲得していかなくてはならないことを意味していました」。そのこともあって関氏は、社内に初めての営業部門を自ら設置。ホームページなどでの情報発信をはじめネットを活用した販路開拓に注力すると、見事に脱下請けを成し遂げ、新社長として社内外から信用を得ることになったのだと言います。
逆境に立たされたからこそ
生まれた「割裂®加工技術」。
社長に就任してから数年後、リーマンショック、東日本大震災と、未曾有の危機を立て続けに経験し、次なる「オンリーワン技術」の創出が事業存続の鍵になると強く感じた関氏。営業部門に引き続き、今度は開発部門を設立すると、ほどなくして、世界21ヶ国で特許を保有する「割裂®加工技術」を誕生させたのだそう。その経緯について関氏は「きっかけは“裂いて食べるチーズ”でした」と語り始めてくれました。「ある時お客様から、プレス加工では対応できない部品の図面を受け取ったことがありました。いわゆる鍛造メーカー向けの誤発注だったのですが、ふと息子がチーズを裂いて食べる光景が頭をよぎり“1枚の金属板でも、裂いて曲げれば複雑な三次元の形状を作れるのでは…”と思い切って挑戦してみたのです」。タイミング的には、周囲が復興に目を向けていた時期だったと言います。「当社も壁がひび割れている状態でしたが、ダメージを受けた今こそ攻めの姿勢であるべきだと、一心不乱に割裂®の開発に打ち込みました」。復興後のことも見据えた関氏のその判断が、結果的に同社の未来を救うことになったのです。
ニーズとシーズの一致。
そして「想い」の一致が2社を結んだ。
銀行からの融資も難航するほど、見通しがないまま進められた割裂®の開発でしたが、いざ技術が完成すると「常陽ビジネスアワード2012*」最優秀賞受賞をはじめその評判は徐々に拡がり、取引の問合せも海外問わず順調に増加。そんな状況に関氏はこう語ります。「割裂®の本当の価値を感じてもらえる相手と仕事をご一緒したいと思っています。反対に、割裂®をただ単にコスト削減の手段としか捉えていない、価格ありきのお考えの方とはお取引しないようにしていますね。その点富士電機機器制御さんは、割裂®の価値を大変高く評価してくださいましたので、こちらも同じ熱意と誠意で対応させていただきたいと思ったわけです」。そうして、割裂®という技術がもとでつながった両社の縁。富士電機機器制御社のニーズと、関プレス社のシーズが一致したこと以上に「楽しさを見出しながら新しいものを作っていきたい、その想いが互いに一致したことでよりよいビジネスパートナーになれたのだと思います」と関氏は語ります。
*常陽銀行が主催する、地域に潜在する革新的・創造的な事業プランを表彰する制度。
「割裂®の可能性を、
我々以上に信じてくれていました」
富士電機機器制御社とのマッチングについてさらに深掘りさせていただこうと、その出会いから伺うと、「富士電機機器制御さんがジェグテックに掲載していたニーズに当社が手を挙げ、その返答としていただいた1本のメールが始まりではありましたが、実は前々から売り込みにいこうと狙っていた企業様だったのです」という驚きの答えが。「例えるならば、意中の相手からの前向きなリアクションだったわけで、当社訪問のお申し込みも二つ返事でお受けいたしました」。そうして実現した初対面の時の様子を、関氏はこう続けます。「課長さんをはじめ、技術のエキスパートの方など、錚々たる顔ぶれでお越しいただけた時点で、その本気度や割裂®の価値への理解度の高さを窺い知ることができましたね。ですから我々も、限られた時間の中で当社の魅力を伝えようと、実際の工程もすべてお見せし技術の開示を行いました」。それは信頼感の表れであると同時に、さらなる可能性を感じ取っていただく狙いがあったと言います。
ジェグテックを接点に、ともに歩み出した大手と中小。
「そもそも割裂®加工技術とは、プレス金型を用いて金属を割って裂き、2分割や3分割にして、金属プレス加工では不可能な複雑三次元形状を一体で作れる技法です。当社は現在、割裂®を応用した“内部割裂・外周割裂・割裂接合”といった技術も保有しています。もちろん、それらの技術は当社のコアコンピタンスとなっていくものではありますが、それは恐らく5年後10年後の話。当面は、割裂®を入り口として、当社の価値に興味を持っていただいたお客様をキャッチアップしていきたいと考えています。そう言った意味では、ジェグテックもますます活用していく予定です」と直近の展望についても聞かせてくださった関氏。「つまり、割裂®から生まれる波及効果を狙っていきたい。既存のお客様に関しても、当社の技術力を見直していただけたことで仕事の幅が増えました。近年では自動車部品に限らず、医療、建機、農機といった分野からも受注があります。それらはすべて、割裂®の波及効果によるものですね」。そうした働きかけは、富士電機機器制御社に対しても例外ではないそうで、「当社での初対面の後、今度は富士電機機器制御さんの吹上工場内でプライベートプレゼンテーションを実施させていただきました。工場長や役員の方々、他工場の皆様にもご出席いただいた貴重な場で、割裂®以外の技術もアピールし“関プレスは割裂®だけじゃない”ことを広く訴えかけ、当社との今後の可能性を感じてもらえたように思います」。富士電機機器制御社への取材の中でも同様のお話が挙がっていた通り、互いに継続的な関係を望まれている両社。割裂®での成功に続く施策に注目が集まります。
最後に、ジェグテックの今後の活用法について一言お願いすると、「今回の富士電機機器制御さんとのマッチングで実感しましたが、ジェグテックでは今自分たちが売りたいものに特化してアピールできるのがいいですよね。反対に、他企業からのニーズも的確に把握できる。だからこそ無駄なく、効率的にパートナーに巡り会えます。その利点は今後も大いに活用していきたいですし、何より直にやり取りできることで、相手の人柄やビジネスに対する本気度も窺い知れるのは、他にはない魅力だと思います。その上無料で利用できるとなれば、活用しない手はありませんよ」と声高らかに締めくくっていただきました。
FROM J-GoodTech
今回ご紹介したのは、町工場ながら大手企業とのマッチングを果たした中小企業「株式会社関プレス」。
自動車向けのプレス金型加工業で培ってきた技術をベースに、
自社独自の新たな技術を開発したことで大きな成功を掴みました。
その類い希な技術力の裏には、果敢なチャレンジ精神と、
ニーズを読み解くマーケティング力も備わっていたように思います。
日本の中小企業は優れた技術を持っていると言われて久しいですが、
中小企業の中にはその技術を活かして新たな事業に挑戦されている企業が数多くいらっしゃいます。
今後もジェグテックでは、そのような技術力や卓越したサービスを有する中小企業に焦点をあて、
より多くの企業の目に触れるような活動を促進していきたいと考えております。